日本株展望

米雇用統計よりも注目したい成長戦略の早期実行 - (page 3)

ZDNet Japan Staff 2016年08月05日 11時14分

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米雇用統計よりも注目したい成長戦略の早期実行

 ただ、今回政府・当局が打ち出した経済政策や金融対策の効果は限定的に留まり、市場では成長戦略や構造改革の進捗が遅れていることへの不満が根強くなっている。例えば、IMF(国際通貨基金)は8月2日に日本に関する経済審査報告書を公表し、安倍政権に構造改革と中期的な財政健全化策の拡充を要望した。

 同報告書上でIMFは、低成長・低インフレからの脱却には「アベノミクスの大幅な改善が必要だ」と訴え、具体的には賃金の引き上げや消費税の段階的増税などを有効策として示していた。実際、政府・当局が目指している「インフレ率2%、実質成長率2%、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化」のどれも達成する見込みが難しい状況だ。

 IMFは、経済政策の十分な改善がなければ、公的債務の拡大や金融緩和の長期化に伴うリスクが高まるおそれがあるとし、「世界経済に負の影響が広がる可能性がある」とまで警告した。

 2016年4月にIMFが公表した世界経済の長期見通しで、今後5年平均実質成長率(見通し)が最も低い主要先進国が日本であったのは寂しい限りだ。日本の今後5年平均実質成長率は0.47%と、最近5年の平均(0.81%)より低下して行くとみられるのに対し、豪州、シンガポール、米国、カナダなど他先進国の成長率は2%以上を維持していくと予想されている(図表3)。

 日本の成長率が停滞していくと予想される要因としては、総人口(労働人口)の伸び鈍化、構造改革(規制緩和など成長戦略)の遅れ、非効率な資金循環(個人の預金や企業内部留保が過多で、成長分野への投資が伸びない)などが挙げられる。

 換言すれば、経済成長に必要な3要素(労働人口の伸び、生産性の伸び、投資資金の伸び)が改善しないと、安倍政権が目指す「名目GDP600兆円」の実現が危ういだけでなく、日本株式が「世界景気や為替相場など外部環境の変化に揺らされるだけの市場」であり続けるリスクがある。

図表3:主要先進国の長期実質成長率予想(IMF見通し)

GDP成長率平均
(注1)最近5年平均成長率=2012年から16年(予)までの実質GDP成長率平均
(注2)今後5年平均成長率(予)=2017年から21年までの実質GDP成長率平均(予想)
(出所)「IMF World Economic Outlook Database-April 2016.」より楽天証券経済研究所作成

まとめ--構造改革に向けた政府の強いアクションを期待

 8月1日週の国内株式市場は、米ダウ平均とドル円の軟調に押される展開となり、安倍政権が閣議決定した28兆円超の景気対策は、外国人投資家の関心をそれほど喚起しなかった印象だ。

 昨年に日本株式に対して慎重姿勢に転じたとされる外国人投資家の信頼を取り戻すためには、ETF買入枠拡大によるPKO(株価下支え策)や公共投資を中心とする財政出動で市場や経済の需給ギャップを短期的に埋める政策では足りないと考えられる。

 日経平均の行方を左右する外国人投資家は、「働き方改革」など労働規制緩和による雇用市場活性化、外国人労働者の拡大、民間資金や外資の導入によるPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)推進、徹底した規制緩和による起業の活性化、国内企業や個人による投資資金の拡大支援、農業分野の競争力向上などを、日本経済が再び成長に向かうための「構造改革」として注目しているとされる。

 どれもが、日本のGDP拡大(経済の成長)に寄与しそうだが、既得権益(労働者、官僚、企業)による抵抗も強い分野として知られている。

 安倍首相は8月3日、「最優先課題は経済」「デフレからの脱却速度を最大限引き上げる」と表明した。先般の参院選で勝利し、安定した政治基盤を築いた与党政権にこそ、低成長見通しを打ち破るような構造改革と成長戦略を推進するべく強いイニシアティブを発揮してもらいたい。

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