2016年のSaaS業界--重要トレンド - (page 2)

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-08-09 06:00

 垂直展開型SaaSへの投資に特化したベンチャーキャピタルであるEmergence Capital Partners(ECP)は、医療業界やエネルギー業界、公益事業などを始めとする幅広い垂直市場を対象に400社以上の企業を網羅した、急成長中の業界クラウド市場を一覧する図を作成した。


提供:Emergence Capital Partners

 ECPは業界クラウド事業者を、「実現支援型」(Enabler)と「破壊的改革型」(Disrupter)の2つのタイプに分類している。実現支援型の事業者は、対象となる業界のパートナーとして、補完的なアプリ、データ、サービスの提供を行う。一方、破壊的改革型事業者は、それとは対照的に、独自の市場を構築して従来の高い利益率が得られる市場構造を破壊する傾向があるため、旧来の企業から恐れられる存在だ。医療業界のAthenahealthVeevaは実現支援型の例であり、旅客運送業界のUberや、宿泊施設の貸し借りを実現するAirbnbなどは破壊的改革型の例だと言える。


提供:Emergence Capital Partners

SaaSからPaaSへ

 SaaSプロバイダが一定の水準に達すると、関心の中心は顧客の獲得から顧客の維持に向かう傾向がある。そのための方法の1つが、顧客が主力製品のアドオンアプリの作成と配布を行うことを可能にするPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)機能を追加することだ。その典型的な例は(またしても)Salesforceで、同社は2007年にプラットフォームForce.comをリリースしている。

 同様の手法を採用しているほかの代表的なSaaS企業には、垂直市場向けのコンテンツ管理およびコラボレーションソリューションの作成を行える「Box Platform」を提供するBoxや、Slackがある。Slackは、同社の主力であるメッセージング・コラボレーション製品内から外部アプリケーションにアクセス可能なサードパーティアプリを作成できる「Slack Platform」を提供している。

 同社はアプリケーションエコシステムを拡大するため、数社のベンチャーキャピタルとの共同で、Slackで使用する製品を作るチームを支援するファンド「Slack Fund」を立ち上げた。Slackの「App Directory」では、2016年6月21日時点で、500以上のアプリが提供されている。

モバイル対応とユーザー体験

 アプリケーションはクラウドに移行しつつあるが、同時にモバイル対応も重要になってきている。実際、一部のSaaSアプリケーションは(特に新興市場では)最初から「モバイルファースト」で作られている。

 ECPは、300社以上の企業を網羅したモバイル対応エンタープライズアプリケーション市場を一覧する図を作成した。そのうち約3分の1が垂直市場をターゲットとしており、残りの3分の2が水平展開型のSaaSプロバイダだ。その多くは、生産性向上のためのアプリケーション(コンテンツ、コミュニケーション、タスク管理とカレンダー、モバイルフォーム、イベントおよび連絡先管理)を提供している。


提供:Emergence Capital Partners

 また、ECPが「モバイルエンタープライズ実現支援型」事業者と呼ぶ、モバイルアプリ開発者がさまざまな問題を解決するのを支援するためのエコシステムも存在する。企業の数から判断すると、モバイル開発市場における最大の課題は、ユーザーの取り込みと開発効率だ。

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