編集部からのお知らせ
記事まとめPDF「日本のスタートアップ」
お勧め記事まとめPDF「マイクロサービス」

2016年のSaaS業界--重要トレンド - (page 3)

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2016-08-09 06:00

 ユーザー体験(UX)は重要になりつつあるが、これはモバイルアプリだけでなくエンタープライズソフトウェア全体の問題だと言える。

APIとマイクロSaaS事業

 フル機能のアプリケーションを提供するのではなく、顧客が必要に応じてサービスをカスタマイズできるAPIツールを提供する、新しいタイプのSaaSスタートアップも存在する。このAPIツールは、開発者だけでなく、技術に詳しくない一般利用者でも利用できるようになっている。ベルリンに本拠を置くベンチャーキャピタルPoint Nine CapitalのリサーチアナリストClement Vouillon氏は、この種の取り組みを「SaaSのアンバンドリング」と呼び、その代表例としてClearbitを挙げている。

 ClearbitのAPI「Enrichment」は、一般に利用可能な情報や、同社がウェブから独自に取得した情報を使用して、電子メールアドレス(例えばマーケティングキャンペーンで収集したもの)から、その連絡先情報に関する情報を補足する。これには、その人物の名前、肩書き、社名、ソーシャルメディアアカウントなどの情報が含まれる。また同社は、個人や企業の情報と統合されたグローバルな監視リストを比較対照し、詳細な検索パラメータを使用してターゲットとなる企業のリストを作成するAPIや、肩書きとドメインから企業の連絡先情報を検索するAPIも提供している。

 また、Vouillon氏が発見した別のトレンドに「マイクロSaaS」事業がある。これは、小規模なチーム(2人から3人)が非常に特殊なニーズに対応するニッチな製品や、既存のSaaSアプリケーションを補完するアドオン製品を生産するというものだ。

小規模企業とSaaS

 SaaSのアプリケーションは、オンプレミス型のインフラストラクチャやアプリケーションの導入や管理を望まないスタートアップや小規模な企業に適している。

 BCSGは2015年に、起業前のスタートアップから既存の小規模企業までを含む600社の欧州企業を対象とした調査レポートを発表し、この市場には成長の余地が十分にあると述べている。回答企業の約3分の2(64%)は、すでにクラウドベースのソフトウェアを使用しており、使用しているアプリケーションの数は、1企業あたり平均3つだった(多くの場合、電子メールやウェブサイトの作成、決済などのすでに定着している分野のアプリケーションが利用されている)。しかし、2017年までには78%が新たなソリューションを購入する見込みであり、使用しているアプリケーションの数は平均7つにまで増加すると予想されている。

 BCSGのレポートでは、中小企業がSaaSベンダーに求めている分野として、コラボレーション、財務管理、顧客管理、マーケティング、プロジェクト管理などを挙げている。

SaaS企業の業績

 では、SaaS企業の業績はどのような状況だろうか。カスタマーサクセスプロバイダであるTotangoは、2011年以降この問題に注目した調査を毎年実施している。同社が発表した2016年版の「SaaS Metrics Survey」では、調査対象のSaaS企業の3分の2で年間解約率が5%以上となっており、回答企業の大半(81%)では、既存顧客に対するアップセルや販売拡張から得られた売上は、新たな売上のうち20%以下となっていることが明らかにされた。また3年連続で、成長が著しいSaaS事業者は、解約率とアップセルでよい成績を残している。さらに、事業者が2016年に重視する指標として、顧客維持コスト、顧客の健全性、顧客の生涯価値などが挙げられているほか、半数以上の企業が、顧客維持に掛かる費用が前年よりも増加していると回答している。

 SaaS企業の業績に関する指標や分析について詳しく知りたければ、「Pacific Crest SaaS Survey」の2015年版を参照して欲しい。まもなく2016年版の調査結果も発表される予定だ。

結論

 SaaSは今後さらに多くの垂直市場向けに多様化していく一方で、大規模事業者は、今後もPaaSの機能を導入してアドオンエコシステムを強化することで顧客維持率を高める戦略を進めていくだろう。モバイル対応とユーザー体験はますます重要になっており、APIやマイクロサービスを使用したクラウドベースのサービスも重要性を増していくと思われる。また、成功しているSaaS事業者は、顧客解約率とサービスのアップセルでよい成績を残す傾向にある。

 この特別レポートでは、「シャドーIT」やセキュリティ、コンプライアンス、従来のオンプレミスソフトウェアとの統合などに関する話題も取り扱われている。ただし、SaaSは必ずしもすべての企業に効果がある特効薬ではないし、重要なビジネスプロセスをアウトソースする場合は、デューデリジェンスが必要になることには留意すべきだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]