オペレーション(運用)について
いかにスペックシート上で同じように見えても、その設備を運用していく担当者の「構成に対する理解不足」や「スキル不足」があれば、日常運用も滞りがちになり、もしもの障害時に対処できなくなる。
つまり、運用担当者もデータセンターの各設備に対して、「設計思想」・「構築過程」を知ることが重要となる。構築担当者もどのように設備が運用されているかを熟知しないで新技術を用いた設備構築をしても、使い勝手の悪い(運用し難い)設備構成となってしまう。
また、各設備(建築・電気・熱源・空調・通信・セキュリティー等)の専門家であっても、それぞれの設備が他の設備とどのような補完関係があるのかを理解しなければ、「点検時での停止範囲」や「障害時の影響範囲」などの把握が困難になる。
つまり、今後のデータセンターの評価・選定の決め手は、「スペックシートの項目に対しての満足度」や「認証取得の数」でなく、「データセンターをどのように運営しているか」が重要な判断要素となってくるのである。
最後に
最近では、クラウド環境の充実により、データセンターの立地環境や設備環境を意識させないサービスが普及してきている。複数のデータセンターを高速ネットワークで接続し、相互バックアップを取ることによって、信頼度の高いサービス提供が可能となっている。
アット東京は2000年6月の会社発足以来データセンター専用事業者として、都内で複数のセンターを構築・運営しながら、社員一人一人が、「設計」「構築」「運用」をいろいろな場面で経験し、スキルと経験に基づいたセンター運営実践してきた。
これは、それぞれの担当者が、「データセンターを滞りなく運営していくのが一番のサービスである」との思いがベースにあるからこそ、実現出来ているのだと考えている。
顧客と話していても、データセンターの設備、サービスメニューはもちろんのことであるが、この「人材」がデータセンターの価値を決めるものなのだと実感している。
今回3回連載の機会を頂戴したが、地球規模での環境への配慮、環境への配慮にもつながる効率的運用のための技術、そして「人」という、もしかしたらいままではあまり気にしてこなかったようなところも、データセンターを選ぶときのポイントやヒントとして得て頂けたら大変に嬉しく、光栄なことである。
- 伊藤 久(いとう ひさし)
- アット東京 理事
- 1982年4月、東京電力株式会社入社。2000年6月、株式会社アット東京発足に伴い出向、データセンターの設計・構築運用の技術責任者となり、現在に至る。現在アット東京が運営している全てのセンターにおいて、データセンター本体の建設だけでなく、顧客のコンピュータ室利用の提案から設計・構築・最終動作確認・運用までの技術方の責任者を務める。また、顧客がデータセンターを利用する段階になった後も、省エネを含めた運用を多数提案している。