中国人のソウルフード「火鍋」が変える食のデリバリー

山谷剛史 2016年08月09日 06時30分

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 中国では「外売」と呼ばれているフードデリバリーは、あらゆる業界にインターネットテクノロジを適応させる「互聯網+(インターネットプラス)」の中で最も普及したサービスジャンルだ。CNNICのインターネット統計によれば、7億人強のインターネット利用者のうち、21%にあたる約1億5000万人が利用し、そのうち1億4600万人、つまりほとんどがスマートフォンを利用している。また調査会社の易観国際(Analysys International)によれば、今年上半期におけるデリバリーの注文数は5億2600万件で、取引額は120億元強(約1830億円)となった。

 中国の都市部では、デリバリーは多くのレストランや食堂などのリアル店舗が行い、1つの外食形態として定着している。特に北京や上海などの大都市では、デリバリーをする自転車が多数往来するのを見かける。こういった大都市では、ケンタッキーフライドチキンやマクドナルドやピザハットなどのファストフードや、炒め物メインの中華料理はもちろん、和食や洋食などもデリバリーされる。アイスクリームもデリバリーされるようになった。

 ところが中国人のソウルフードの中でも、「火鍋」は長い間デリバリーされなかった。火鍋は内陸の都市、重慶の名物で、中国全土でも愛される鍋料理である。赤いというよりむしろ黒い激辛と、白濁した薄味の2種類のスープが鍋に用意され、肉やキノコ、野菜などを楽しむ。デリバリーするには難易度が高そうなのは事実だ。中国メディアによれば、外食の食事別シェアでは火鍋は全体の3割ものシェアがあるが、火鍋のデリバリーともなると、デリバリー全体の1%未満のシェアしかないそうだ。

 ところが、かつては到底無理と思われていた火鍋のデリバリーが広がり始めている。「鍋否」というサイトはその中の1つ。鍋否のデリバリーは、配送員が火鍋の具材と水と電気鍋を持って家庭に赴くというスタイル。利用する水は火鍋の本場の重慶の飲料水を採用するというこだわりっぷりだ。

 鍋否は北京で配送サービスを実施する。45の配送地点から、市街地である五環路(第五環状道路)を対象にサービスを提供し、月2~3万件ものオーダーを受ける。平均単価は1オーダーにつき152元(2300円強)だそうで、計算すると月4600万~6900万円の売上を記録することになる。そのサービスが評価され、投資会社から3400万元の融資を受けたそうだ。

 重慶同様、火鍋が人気である四川省成都では「開一火」というサービスが、北京と上海では「淘汰郎」というサービスが始まり、淘汰郎もまた1000万元規模の融資を受けた。各地で火鍋のデリバリーサービスが続々と立ち上がっている。今後さらに多くの地域に広がるだろう。

 この動きから2つの流れが見えてくる。1つ目は、既存のサービスでは透明プラスチックなど使い捨ての弁当箱でデリバリーするのが常識だったが、食器のレンタルという考え方が今回加わったこと。2つ目はどこでオーダーしても同じクオリティーで届くネットデリバリー外食パッケージが浸透しつつあるということだ。ヤフーオークションや淘宝網(Taobao)といったC2Cサイトでモノを売るように、デリバリーサイトに無数の食堂やレストランが登録するのが当たり前だったが、これからはAmazonや京東商城(jd)のようなB2Cのような、1つの企業から全市内に同じ食を届けるサービスが普及していきそうだ。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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