XcelsiusはSAPの下で形を変え、「SAP Crypstal Dashboard Design」と呼ばれるものになった。しかしRoambiを獲得したことで、SAPはXcelsiusとRoambiの開発チームが持つデータ可視化技術を生かす2度目のチャンスを得たことになる。
Roambiはモバイルデバイス向けのデータ可視化に特化したソフトウェアだ。出力は美しいが、そのチャンスはニッチなものに止まる。SAPは買収条件を開示していないが、今回の買収は資産買収であり、買収金額はかなり小さいといううわさがある。その一方で、SAPの主力事業がERP事業であることを考えれば、モバイル向けの可視化技術を取得した(しかもそれを低価格で手に入れた)ことは合理的だと言える。
ERPとアナリティクスの組み合わせ
エンタープライズソフトウェアに視覚的なアナリティクス機能を追加するというテーマは、WorkdayによるPlatfora買収にも当てはまるように見える。アナリティクスは、ソフトウェアに組み込まれたときにもっとも力を発揮するため、大手ソフトウェア企業が有力なアナリティクス製品を獲得して自社のソフトウェアに組み込もうとするのは、自然な成り行きだ。以前の記事で触れた、ZendeskがBIソフトウェアベンダーであるBIME Analyticsを買収した案件も、この分類に当てはまるように思える。
コンサルティングサービスを獲得したTeradata
TeradataがロンドンのBig Data Partnershipを買収した件は、それほど背景が明確ではない。もちろん、Teradataはすでに多くの買収を実施しており、10月の記事でも3件の買収について触れている。同社は2014年後半にビッグデータコンサルティング企業のThink Big Analyticsを買収しているが、Big Data Partnershipの買収も同じパターンに当てはまる。実際、Big Data Partnershipは正式にThink Big部門に統合されることになった。
では、なぜTeradataは2度もコンサルティングサービス企業の買収を行ったのだろうか?これは最終的にはエンタープライズ市場での営業の問題に帰結するように思える。現在でもビッグデータを導入して成功させるのは難しいことだが、経験豊かなコンサルティング企業やシステムインテグレーターが支援することで、エンタープライズ顧客は自信を持ってビッグデータの導入に取り組むことができる。このため、Big Data PartnershipやThink Bigは、顧客にツールやテクノロジを推奨できる重要なポジションにある。小規模で管理しやすく、地理的に分散したコンサルティングサービス組織を複数持つことは、Teradataにとって非常に有利に働く可能性がある。
エンタープライズ市場の獲得へ向けて
この記事で見てきた買収事例には、1つを例外を除いてすべてがエンタープライズ市場を意識したものだという共通点がある。Microsoftの場合にはエンタープライズクラウドであり、SAPとWorkdayの場合にはエンタープライズソフトウェア、Teradataの場合はエンタープライズ市場向けコンサルティング(あるいは営業)だった。つまり、5つの事例のうち4つがエンタープライズ市場を獲得することを目的としている。
成長を目指すソフトウェア企業は、エンタープライズ市場で成功する必要がある。では、TableauのHyPer買収はなぜこのパターンに当てはまらなかったのだろうか。残念ながら筆者にははっきりした答えはない。しかし、Tableauの買収にエンタープライズ市場の視点がないことは、同社が3四半期連続で利益目標を達成できなかった理由を部分的に説明していると筆者は見ている。
Tableauの次の一手は、エンタープライズ市場を意識したものにすべきなのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。