2社目は鉱山を経営しているA社で、A社は当初完全にサイロ化されており、世界中の鉱山ごとにさまざまなベンダーが個別にオンプレミス環境でシステムを導入していました。その結果、必要なデータがなかなか分析できず、鉱山の効率化が大きな課題となりました。そこで、データの収集から分析、現場への還元までの一連のビジネスプロセスをデジタル化し、「デジタル鉱山」を実現するためにビジネスクラウドを構築しました。
重機や作業員の稼働状況といった鉱山を起点とするデータはすべてMicrosoft Azure上に収集され、分析されています。データは作業員のウェアラブルデバイス向けの情報発信、鉱山管理者向けの管理ダッシュボードといった形で活用され、タイムリーな鉱山管理をデジタルにより実現しました。
また、このデジタル化により重機の故障予測や作業員の疲労予測が可能になり、故障や事故を未然に防ぐ予測型の運営も可能となりました。

デジタル鉱山管理ダッシュボード画面

デジタル鉱山管理掘削監視画面

デジタル鉱山工員管理画面
ビジネスクラウド基盤という観点で見てみると、AzureがPaaSとして提供しているIoT関連サービス群を活用しています。同サービス群を活用することで、AMQPやMQTTといった一般的な通信手順により送信されるセンサからのデータ受信 (Event Hub, IoT Hub)、大量データの動的な分析 (Stream Analytics)、データ蓄積 (Data Lake Store, Document DB, SQL Database, SQL Data Warehouse)、分析 (Machine Learning, Data Lake Analytics, HDInsight, Data Factory)、可視化 (Power BI) といった一連のシステムを既存サービスの組み合わせで実現することができます。結果としてシステム全体の品質と開発期間短縮に大きく寄与しています。
まとめ
今回はビジネスクラウドを実現し、オンプレミス、クラウド (パブリック・プライベート) をハイブリッドし、最適な価値を生み出す手法を解説しました。実際にはさまざまな環境や制約があるため一筋縄ではいかない領域なのですが、ご紹介したリオ・ティントのように思い切りクラウドファーストにかじを取るという意思決定も新しい価値を生み出すためには重要になります。
さて、前回・今回と、クラウド全体を俯瞰した話をご紹介してきましたので、次回は少し視点を変えて、Azureを活用するために必要な設計の勘所についてご紹介できればと考えています。