杉井氏:「海外でHyper Ledgerと組んだぜ」というのもすごいのですが、JPXのような実証実験を重ねているところは少ないのでは。そのへんに日本人気質がうまく出ていると思います。基礎技術をゼロから生み出すのはなかなか難しいのかもしれないけど、それでも「mijin」「Orb」など国内発のブロックチェーンといえるものも出てきています。これは世界にないですし、おもしろいと思います。

杉井靖典(カレンシーポート 代表取締役 CEO
実証実験の段階になると、検証・チェック項目についてまとめるのですがこれは海外ではやっていないはずです。こうした検証やチェックをちゃんとやって、できなかったらなぜかと調べて、改善する方法や可能性、問題のレベルは根源的なものか、今後解決されるものか、といったところを調べて勉強する。このパワーは日本人っぽいなと思いました。どの実証実験でもそのレベルでやっています。
平野氏:よくメディアで「日本は遅れている」という話を見ますが、あれはなんでしょうね。
杉井氏:たしかにとっかかりや着想のタイミングは遅れているのかもしれない。だけど、とりかかってからは猛スピードなんですよね。それは異論ないと思うのですが。
朝山氏:私のチームはヨーロッパとニューヨークと日本の3カ所でやっているんですが、すでにパブリックのブロックチェーンをひととおり作って限界を感じており、今はプライベート型をつくっています。実用ファーストというのがわれわれの売りで、表にはでないですが実用ベースの顧客も実は増えています。そもそもの商品が勘定エンジンから入っていて、次はスマートコントラクトの変わったサービスをやりますが、その実用的な商品化もできています。そのため、実証実験も実用ベースのものが多いです。
銀行はガイドラインの規制が多いのでメリットも少なくなってしまうのですが、海外に比べて日本は電子マネーやポイントといった非金融機関の金融業に準じたサービスが普及しています。そこをアグレッシブに、われ先に実用ベースのフィジビリティテスト(実装可能性調査)をしています。
杉井氏:それはわれわれも一緒です。この6月くらいまでは金融機関と進めてきたんですが、ここ1~2カ月は「非金融のこともできるみたいだ」という流れになっていて、「じゃあ10月からサービスインしたいのでよろしく」という僕らでは追いつけないくらいの速さで実用化を狙っています。
朝山氏:まだどことはいえないんですが、銀行の区切りでいうと、日本では2行がガイドラインに準じてmijinでシステムを作ろうと動いています。
ブロックチェーンのメリットを顧客に説明するのはむずかしいですが、原理からいくと使い道は限られていて「認証系」か、コインから来た「勘定系」か、それが複雑になった「スマートコントラクト(契約の自動化)系」くらいです。あとは改ざんが非常に難しいという特徴を利用した、データの保存系やユーザーの認証エンジンにいくこともあります。基本的にはこの分類で、この半年くらいは「なんでもできるので、スマートコントラクト・分散型アプリケーションの構築基盤のEthereumやその派生から来たプログラムを書いて実証実験しよう」という流れが大きかったんですが、そろそろ実用ベースになっています。