IoTとブロックチェーンの関係について
小川氏:先ほどの川村さんの話のなかにIoTという最近注目のキーワードが入っていました。ブロックチェーンはデータの保全性や信頼性が高くIoTにも適していると考えられると思います。それぞれのデバイスがブロックを持ち、互いに監視しながら通信し、信頼性が高く、保全のコストが低いIoTネットワークが構築できる可能性があります。IoTとブロックチェーンの関係について意見はありますか。

朝山貴生 テックビューロ 代表取締役所長
朝山氏:私の商品の見方からいくと、そもそもIoTとは”マイクロトランザクション”の概念です。つまり非常に小さな仕事の集合体として、勘定概念がデバイスごとにあるわけです。そこでアグリゲーションによる決済方式だと辻つまが合わなかったり、既存のスキームが使えないときに、ブロックチェーンは無限にアドレスを生成でき、非常に低コストにマイクロペイメントの整合性を保ったまま動かせる。そういう意味ではIoTに最適だと思います。たぶんこれに「デバイスデモクラシー」という概念で最初に目をつけたのがIBMとSamsungですよね。
川村氏:そのお話は、例えば「在庫がなくなったら自動的に発注する」というSamsungの試みですよね。そのレベルが第1段階にありましたが、最近取り組んでいるのはセンサ技術との融合です。
例えば野菜や生鮮食品のように、物流上で一定の温度より高くなってしまったら商品の価値が下がるもののトラッキングをする仕掛けなどに取り組んでいます。野菜や生鮮食品の価値を高めるために、その途中の状況もトラッキングして、ブロックチェーンで記録して、トレーサビリティ(追跡可能性)を保つ仕掛けを作っています。
杉井氏:それは大量のトランザクションが発生しそうですね。
川村氏:そうなんですよね。(システムには)エクセプション(例外事例)として挙げるしかないイメージです。
朝山氏:あと意外と需要がありそうなのがメディカル系です。要は人命に関わるところでデータの改ざんや間違いがあると非常に大きな問題になるので。
杉井氏:そういうジョイントベンチャーができようとしているようです。ブロックチェーンを使ってできるんじゃないかと。
IoTで言うと、今はセンサなどからデータを収集してくる過程のシステムの話が多いですが、トークンに制御情報を持たせて、その権利をデバイスに持たせて制御するという方向もあります。いまFinTech企業の支援施設であるFINOLABに入っているNayutaという企業が作っているのはそういうものです。プロトタイプとしてわかりやすいので、まずは電源タップをコントロールしているといいます。お金を投げると、どこかのやつが使えるというものです。しかし一般の方にみせると、わかりにくい(笑)。
朝山氏:ブロックチェーンの良いところをより簡潔に言うと、間の通信が丸見えでも問題ない点です。その利点を使うケースが多い。要は隠れて手前で情報に署名したら、あとはSSLなど必要なく相手に到達して、相手にしかわからないように承認できる。あいだの経路を気にする必要がない。
杉井氏:使用権のコントロールも当然ながらできて、例えばドキュメントというのは人が読めるものだけではなくマシンリーダブルであれば良いわけです。よく使われるものですとMIDIのような制御文をUPしておくようなケースです。照明のコントロールや強さやタイミングをトークン化しておいて「何時何分から再生しろ」といえば、それを受けてデコードするチップさえあれば再生できます。音も出せるし、映像もコントロールできる。権利を伴いながら、そういうところに使われていく可能性はあると思います。
平野氏:別の見方をすると、IoTのデバイスひとつひとつが独立したサービサーになれるんです。それぞれが自律して、すぐに動いてくれる。中央でぜんぶ見なければならないのではなく、1個1個が自律的に動くことが可能なのです。
<3回に続く>