雇用など地方創生への期待
第3は、地方創生にある。具体的には、DCの地方分散化が図れるとし、データドックの取り組みに関心がある。経済産業省は1つの成功モデルになればと期待したのか、7月に開催された同社設立イベントに商務情報政策局の安藤久佳局長が来賓挨拶をしたという。
新潟県知事の泉田裕彦氏は地元大学の優秀な学生の雇用を期待し、進出を歓迎しているという。採用は第1期で約15人、第2期で累計50人を計画。今年7月に本社を長岡市も移転した。
40億円の初期投資を含めた資金も、地元の金融機関から調達する。「株式の7割弱を持つメディックスは連帯保証をせず、データドックとしての独自調達にこだわっている」(宇佐美社長)。地元の期待が高いからなのだろう。投資も8年で回収するという。
ちなみに、第1期の収容ラックは500(第2期に2000に拡張)、提供電力は1ラック当たり30kVA、床耐荷重は1平方メートル当たり3トン、回線サービスは100Gbpsなどとなる。1ラック当たりの料金は、6kVAで月額16万5000円の予定。
データドックの立ち上げにはDCの設計や運営などに携わった経験者も参画しており、その1人である日本ユニシス出身の廣田博美取締役COOは「箱だけで勝負するのではない。付加価値サービスを提供する」と強調する。
例えば、ハウジング・ユーザーに、ビッグデータの活用、マーケティング・ソリューションへと広げる。動画配信やオンラインゲーム、IoT基盤としての採用も働きかける。さらに、ソフト開発会社やDC事業者との協業を推進し、2018年度に約20億円、19年度に約30億円の売り上げを計画。新しいDCをつくり出せるかが成否のカギを握っている。

- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。