グループ/グローバルを視野に入れたITガバナンスを構築し、全体的な最適化を図る取り組みは多くの企業で模索されています。一方で、企業によって組織やシステムに関するこれまでの経緯や現状の運営形態は異なり、求められる取り組みも同じではありません。各事業体とのコミュニケーションや情報共有を含む協調関係の成熟度に即した取り組みが求められます。
グループ/グローバルIT運営の難しさ
グループ経営の重要性の高まりやビジネスのグローバル化に呼応して、多くの企業がグループ/グローバルを視野に入れたIT運営のあり方を模索しています。その取り組みは、技術標準化の推進、シェアードサービス化、ERPなど業務システムの統合・共通化、IT投資の集中管理、内部統制の強化、横断的なIT組織の編成、人材交流など非常に多岐にわたっています。
これらは、どれも重要な課題であることは間違いありませんが、実は非常に奥深い課題でもあります。それは、各企業におけるグループ/グローバルへの対応状況によって取り組むべき施策やアプローチが大きく異なるためです。
例えば、それぞれの海外拠点やグループ企業(以下、事業体)がIT人材をどれだけ抱えているのか、現時点でどのようなシステムを利用しているかといった状況を本社IT部門がまったく把握していない段階で、シェアードサービス化やシステム共通化の是非を議論したり、目指すべき姿を決定したりすることはできません。
また、経営やビジネスの遂行形態として集権型を目指すのか、権限移譲により各事業体の自由裁量を重視した分権型の運営を目指すのかによってもITに関する方針は変わってきます。
各事業体における情報化の進展度合い、本社コア事業との関係性の強弱、合弁・買収などの経緯など、考慮しなければならない点は多岐にわたります。グループ/グローバルIT運営において、ベストプラクティスが確立しているわけではなく、多くの企業が悩み、試行錯誤を続けている状況といえます。
自社のIT運営の成熟度を把握する
企業ごとにグループ経営やグローバル化の進展度合いは異なります。30年以上も前から海外を主戦場としてきた企業もあれば、ここ数年で多数の企業を買収して傘下におさめてきた新興成長企業もあります。ITへの取り組みについても、これまで各事業体でそれぞれ独自に展開してきた企業グループもあれば、これからビジネスに合わせてITの海外展開を始める企業もあります。
まずは、自社のグループ経営やグローバル化の進展のステージを、各事業体とのコミュニケーションや情報共有に着目し、同じ方向に向かって協力して方針や計画を遂行することができる土壌が構築されているかという視点で評価してみることが有効です。ここでは、グループ/グローバルIT運営の成熟度を0から5までの6段階でモデル化しています。

協調関係に着目したグループ/グローバルIT運営の成熟度(出典:ITR)