――今注力していることは何か。
松本氏 情報システム担当としては、今までの電通のマスマーケティングを中心にした文化をすべて変えることに注力しています。そのためにはすべての会社のシステムそのものを変えなければいけません。そこにまず取り組んでいます。
また今回、会社自体が電通イーマーケティングワンと、ネクステッジ電通の運用型広告のところも含めて一緒になりましたから、3つのシステムを統合しています。
執行役員CIO(最高情報責任者)松本卓一氏
すべてを変えた上で、今まではマスメディアに最も注力していた部分を、今度はデジタルマーケティングに変えていく。その中で、新しいクライアントにサービスを提供するときには、デジタルマーケティングという世界標準のサービスをきちんと実装していくことが、最終的にクライアントにデジタルマーケティングをきちんと提供できる基盤になっていきます。
松本氏 これまでは、標準化されたプロセスがあって、明確な仕組みがあったオンプレミス型のサービスでした。すべてのシステムを変えていく中でテクノロジの移り変わりも激しく、開発レスでありながら(グローバル企業なので)世界標準のものを使うということだと思っています。
――IBMやアクセンチュアといった他業種のグローバル企業がマーケティング分野に参画し、勢力を拡大している。
松本氏 SIやコンサルティング企業がマーケティング領域に事業拡大し、クリエイターやデザイナーを一所懸命集めているのはその通りだと思います。一方、生活者の心を動かすようなクリエイティブを作れるようなプロは総合広告会社にたくさん居ますし、電通はまだまだ強いといえる環境にあると自負しております。先行者のアドバンテージがある今のうちに、しっかりとテクノロジ面でも実力をつけていきたい考えです。
IBMやアクセンチュアについても、競合している分野はありますが、デジタルマーケティング部門では広告会社のインサイトが 強い部分があります。そうした状況なので特に日本では連携できる可能性を探る方が健全だと思っています。また、マーケティング分野に展開しているIT企業のみなさんに興味をもっていただいているようで、さまざまなお声がけをいただきます。ただ、まずは経営やシステムなどのあり方を含め、本気でデジタル化に取り組んでいる企業のCMOにしっかり寄り添えるようになりたいです。
――顧客のCMOはIT部門にどんなことを望んでいるのか。
松本氏 クライアントの中でも統合化されたデジタルマーケティングは、ビジネスの中である部分の組織が縦割りになっていたり、それぞれが予算を持っていたりといった構造は往々にしてあると思います。そういう悩みがあると聞いています。
マーケティングオートメーションなどで成果を出そうとすると、基幹システムにつなぐ必要があると思います。そして、基幹システムを握っているのはIT部門なので、連携しないといけない。あるいは、基幹システムを担っているSIベンダーの方々と連携していくこともあるでしょう。
――今後の展望は。
小川氏 私たちは今、「マスメディアの電通」と言われていますが、2020年くらいには「デジタルマーケティングの電通デジタル」と言われるようになっていたいというのが一番の目標です。