今週の明言

日本オラクルが「予算管理」を全部門に広げる意図 - (page 2)

松岡功

2016-08-19 12:00

 とはいえ、日本企業はこれまであまりEPMツールを利用してこなかった。例えば、予算管理などは表計算ソフトで行うところが少ない。また、オンプレミスのEPMパッケージは高価なものが多く、投資効果が把握できないことから、二の足を踏む企業が多いのが実情だ。EPBCSはそうした状況を打破できるのか。これに対し、桐生氏は次のように答えた。

 「ここにきて日本企業でもEPMに対するニーズはグッと高まっている。それに加えて、費用を抑えて短期間で導入できるクラウドサービスであることが、非常に高い関心を呼んでいる。クラウドサービスなので、まずは小さな範囲で試してみるところから始めていただきたい」

 EPMもクラウドサービスで試すことができる時代になった。だからこそ、「“Beyond Finance”の時代に突入した」ともいえそうだ。

「コネクテッドカーに関わるサイバーセキュリティは未解決の重要課題だ」
(シマンテック 坂尻浩孝 執行役員CTO)

執行役員CTO
シマンテックの坂尻浩孝 執行役員CTO

 シマンテックが先ごろ、インターネットに接続された自動車「コネクテッドカー」をゼロデイ攻撃やサイバー攻撃から保護するIoT(Internet of Things)セキュリティ対策ソフトウェア「Symantec Anomaly Detection for Automotive」を提供開始すると発表した。同社の執行役員 最高技術責任者(CTO)でセールスエンジニアリング本部長を務める坂尻氏の冒頭の発言は、その発表会見で、コネクテッドカーへのIoTセキュリティ対策の重要性を説いたものである。

 米Gartnerによると、コネクテッドカーは2020年までに2億2000万台に達すると予測されている。また、国内においても同年までに自動運転車の実用化に向けた研究開発が進んでいる。これらはナビゲーションや運転アシスト技術の進歩で便利になる一方、自動車がインターネットとつながることにより、サイバー攻撃の脅威にさらされるリスクが高まるのは必至だ。自動車へのセキュリティリスクは、ドライバーや同乗者の人命を危険にさらす恐れがあることから、喫緊の課題となっている。

 シマンテックの新製品はそうした課題に対し、機械学習を活用して自動で車載用セキュリティアナリティクス機能を提供。また、自動車の運転に影響を与えずに、すべてのコントローラエリアネットワークバス(CAN bus)のトラフィックを監視し、正常な動作を学習して攻撃の兆候を示す異常な動きを検出することが可能だという。坂尻氏は「各自動車メーカーに対し、高級車への搭載を提案していく」としている。

 坂尻氏の説明で興味深かったのは、自動車におけるIoTセキュリティの領域についてだ。基本的に「通信の保護」「デバイスの保護」「データの保護」「システムの掌握」といった4つのセグメントがあり、それらに対して自動車の内部と外部の環境からなる8つの領域があるという。図はそれら8つの領域のポイントを示したものである。シマンテックではそれぞれの領域に対応した製品・サービスを提供していくとしており、今回の新製品は内部環境におけるシステムの掌握に対応したものとなる。


自動車のIoTセキュリティにおける8つの領域(出典:シマンテックの資料)

 もう1つ、筆者が興味を抱いたのは、ビジネスモデルが複数考えられるのではないかということだ。新製品は自動車メーカーに販売することを前提としているが、例えばクラウドサービスにすれば、シマンテックがサービスプロバイダーと組んで複数の自動車メーカーへサービスとして提供することも考えられる。

 そう思って坂尻氏に聞いてみたところ、「個別の要望に応じてマネージドセキュリティサービスを提供することは想定しているが、当社がクラウドサービスを主体的に展開することは考えていない」とのことだった。

 最も考えられるのは、巨大な資本力のある自動車メーカーがセキュリティベンダーの技術を採り入れて、クラウドサービスとして提供することか。場合によっては交通の安全問題に関わるだけに、行政が何らかの形でマネジメントに乗り出すかもしれない。そんな発想が湧いてくる発表会見だった。

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