ソーシャルネットワークサービス(SNS)が登場・普及すると、人と人とのつながりをサポートする各種機能のうちの一つとしてのメッセージングという位置づけで使われるようになってきた。
SNSを特徴づける要素はいろいろとあるが、その一つは「日常の会話」的な場をネットワーク上で構築したということである。
ある相手への直接のメッセージも、多数の間で交わされる日常の会話の延長のようなイメージとなる。
送り手と受け取り手のUX: 電話の場合
コミュニケーションに関しては、メッセージの送り手、受け取り手、双方についてUXを考える必要がある。
たとえば電話は、送り手(発信側)にとってはいつでも発信できるメディアであるが、相手が通話可能かどうかは(基本的に発信してみないと)判らない。
伝言を残すことができる場合もあるが、そうでなければ頃合いを見計らって発信し直す必要がある。
一方、受け取り手(受信側)は、あらかじめ電話が相手から掛かって来ることが分かっていないかぎりは、割り込みが入る形になる。
返答などのやりとりも(少なくともある程度は)その場でしなくてはならない。
それが受け取り手のその時点での作業などを著しく邪魔したりしないかどうかには、送り手が気を遣う必要がある。
また、発信者番号通知機能が登場するまでは、受け取り手は通話を受けて相手の声を聞くまで発信者が誰かを知ることができなかった。
あらかじめ電話が掛かって来ると分かっていたとしても、今、着信した電話がその予定の相手とは限らない。割り込みが掛かる形になることも含め、受け取り手の選択の自由が送り手に較べて大幅に少なく、UX的にも改善の余地が広くあったと言える。
それを改善したのが発信者番号通知機能、そしてそれと電話帳機能との連動、留守番電話機能などである。
また、それだけでなく、他のコミュニケーションツールやメディアが普及し、メディアの使い分けが多様になったことでも結果的に改善されている。
受け取り手側のこうしたUXの改善は、送り手の気を遣わねばならない度合いを減らすので、そちら側のUXも連鎖的に改善している。
送り手と受け取り手の UX: メールの場合
電子メールの場合は非同期のメディアなので、電話と較べて受け取り手側の自由度は最初から大きい。届いたメールは、読めるとき、読みたいときに読めばよい。送り手も、受け手の状況を気にせずいつでも送ることができる。
メールが届いていることを手動で確認するのは面倒なので、何らかの形の通知を自動的に行う機能は電子メールが登場した初期からいろいろとあった。
PCなどで使う場合は起動、ログインしていないと通知は出なかったが、常時起動の携帯端末で使われるようになると、「通知」は四六時中来ることになった。
すると、相手が携帯端末で受信するメールは、送る時間帯に気を遣わねばならなくなってしまった(派手な「着信音」が流行っていたこともその状況を強化していた)。