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デジタル未来からの手紙

超少子高齢社会の労働力不足をAIで補う--人工知能がもたらす職業観と仕事の変化 - (page 3)

林 雅之

2016-09-02 07:00

 その結果、一部のタスクのみがAIに取って代わられる「雇用の一部代替」、AIと一緒に働く「雇用の補完」、産業競争力への直結による「雇用の維持・拡大」、そして「女性・高齢者等の就労環境の改善」などの雇用への影響をあげている。


総務省 情報通信白書2016

 人口減少と超高齢社会が進む中、労働力不足は日本の産業の停滞をもたらすことが懸念されている。個々の労働生産性を向上させていくためには、AIなどを活用し、働くことの流動性を前提とした雇用の代替や補完によるタスク量に応じた分業や、女性や高齢者の就労環境の改善につなげることが重要になっている。

 こちらでも紹介をしたが、経済産業省が4月27日に発表した「新産業構造ビジョン」の中間整理では、第4次産業革命の進展による産業構造や就業構造の劇的な変化を予測しており、AIやロボットによる効率化や自動化により、経営やマーケティングなど、人間の判断や創造性が求められる業種への流動化が進んでいくと予想される。

 しかしながら、日本においては、AIを活用した知識やスキルの習得、業務の活用などへの意識は低い状況だ。

 こちらの記事でも紹介されているが、情報通信白書では、AIの普及に向けた対応についての日米で比較では、「AIの知識やスキルの習得を使う側に立って今の仕事、業務を続けようと努力する」と回答した人は米国が46.7%だったのに対して日本は28%だった。一方、「対応、準備を行わない」と回答した人の比較では米国は22.8%に対して、日本は51.2%となっており、米国と比べるとAIの知識やスキルの習得への意識は低い。

 また、自分自身が自分の子供への習得AI活用スキルへの設問では、AIを作るプログラミングやAIを生かすデザインなどへのスキル習得に米国では3~4割が意欲を示しているのに対し、日本では2割前後だった。スキル習得意向がないと回答した割合は米国の15%に対して、日本は38.5%となっていることから、人材育成への対応も急がれる。

 私自身も総務省の構成員として参加している「AIネットワーク化検討会議」で2016年6月に公表した報告書においても、AIネットワーク化に対応した人材育成や就労環境の整備についても課題提起をしている。

 人材育成では、プログラミングなどのリテラシ教育、技術者の育成、データ活用人材、法的・倫理的・社会的問題対処し得る人材の育成などの在り方の検討の必要性を示している。

 また、就労環境の整備については、雇用の補完や労働力不足の緩和を促すための取り組みや、労働者がAIやロボットによる代替が困難な能力を身につけ新たな産業に柔軟に移動できるようにするための働き方や法制度、そして、労働の流動性を前提とした自律的な就労環境の整備などの在り方の検討の必要性を示している。

 人口減少が進む中、人間のみの労働力だけでは、日本産業の成長や持続的な社会行政サービスを支えていくことは困難となっていくことが予想される。

 人口減少社会に生きるわれわれにとって、AIなどの活用を前提とした人材育成や大胆な雇用の流動化、雇用の代替や補完によるタスクの分業など議論すべき論点が山積している。労働人口が減っていく時代の雇用のあり方を、政策や産業、地域、個人など、さまざまな視点から検討を重ねていくことが重要となっていくだろう。

林 雅之
国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。

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