「日本産量子コンピュータ」の勝算--量子アニーリング理論の可能性(4) - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2016-09-15 07:00

--量子アニーリング分野の展望は。

大関氏 まずは啓発ということになると思います。こんなことができる、あんなことができると言うだけでなく、実際に示していくことが次のフェーズだと思っています。

 私はどちらかというと日本では量子コンピュータなど、ハードは開発し続けない方がいいと思っていました。大変な手間がかかるので。D-Wave Systemsがおり、米国、カナダが投資し続けていて、もう勝てないと思ったのです。

 でも、意外にそうではないのですね。まだまだ克服するべき問題はあるし、得手不得手もある。その意味で全く異なるキャラクターを持つマシンが登場しても、開発しても良い。群雄割拠の時代というわけです。

 D-Wave Systemsも何に量子コンピュータを使えばいいのか、実はよくわかっていなくて、量子コンピュータの使い方に関する研究を公募していたりします。先ほどの田中さんの「量子アニーリングのマシンを何に使えばいいか思いつく人はすごい」という話がまさにそうで、研究者だけではなくて多くの人たちが議論をしていく段階だと思います。


 そして量子アニーリングは「どこまでできるのか」という限界を知ることも重要だと思います。そのために多くの人が興味を持って参画してくれたらいいなと思います。機械学習に利用するというのも、ある種の苦肉の策です。最適化問題を解くには、問題が残っている部分がある。

 しかし良い解をたくさん出力することができると考えたら、良いマシンじゃないか、と考えて、機械学習に必要な解の試し打ち、サンプリングという技術に転用しました。幅広くさまざまな問題を知っていて、それにつなげていく知恵を持った人材が必要とされる時代です。

 機械学習への適用の仕方もまだまだ未成熟です。変わった使い方をする人が現れるかもしれない。それを楽しみにする部分もありますが、自分たちがやるところはそういう応用分野なのかな、と思っています。

 そもそもなぜ量子力学を使うのかというと、普通のコンピュータでは真似ができないからです。でも、すでに話したように真似できる領域は結構広いわけです。繰り返しになりますが、量子アニーリングでは解の探索に「横磁場」と呼ばれる方法を利用しますが、それ以外の「多様な量子揺らぎ」を利用する。

 それが普通のコンピュータ、デジタルコンピュータによるシミュレーションでも利用可能というわけですから、量子アニーリングを模したアルゴリズムも、さらなる意外な性能を持つ可能性がまだまだあります。この「多様な量子揺らぎ」を使う有効性についても、日本人の研究者が最初に示しました。

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