本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフトの平野拓也 代表取締役社長と、レッドハットの望月弘一 代表取締役社長の発言を紹介する。
「クラウドは、これまでと違う話し方でビジネス提案していく必要がある」 (日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長)
日本マイクロソフト 平野拓也 代表取締役社長
日本マイクロソフトが先ごろ、パートナー企業向けプライベートイベント「Japan Partner Conference 2016 Tokyo」を都内ホテルで開催した。平野氏の冒頭の発言は、その基調講演で、クラウドを今後さらに普及させていくために必要なこととして語ったものである。
日本マイクロソフトは2016年7月からスタートした2017年度の重点事業として、「お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進」「クラウド利用率の増加」「データカルチャーの醸成とデータプラットフォームの拡大」「法人分野でのWindows 10普及」「最新デバイスによる新たなエクスペリエンスの実現」「クラウド時代のパートナーシップ」といった6つの分野を掲げて活動している。
平野氏は同イベントの基調講演で、この中から「お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進」と「クラウド時代のパートナーシップ」について説明した。その内容については関連記事を参照いただくとして、ここではこれらの取り組みのベースとなるクラウド事業の根本的な考え方について語った同氏の話が興味深かったので取り上げたい。
平野氏はクラウド事業について、「当社では全事業の売上高に占めるクラウド比率を2017年度で50%にしようとしているが、2016年度第4四半期には前年同期比20ポイント増の32%まで到達した。今後のパブリッククラウド市場の成長も向こう5年間で2.4倍が見込まれており、当社はまさにその勢いの真っ直中にいる」と語った。
そのうえで、「とはいえ、ビジネス視点で見ると、クラウドにはもっと大きなポテンシャルがあると考えている」とし、図を掲げながら次のような見方を示した。
GDPの領域に照らし合わせたクラウド事業のポテンシャル
「国内総生産(GDP)の観点から見ると、現状のIT分野は全体の5%にしかすぎず、それに効率性や生産性、意思決定といったマネジメント領域を加えても25%といったところだ。それに対し、モノやサービスの製造コストに関わる領域は全体の60%を占めており、今後この領域にクラウドをはじめとしたITがどうビジネスを広げていくか。この領域に大きなポテンシャルがある」