Sason氏は「公共インフラに対する影響としては、2015年にウクライナで発生した停電のようなものが考えられる一方で、チェルノブイリの原子力発電所で発生した大災害のような、より深刻なものも考えられる。しかし、われわれがしばしば目にしている問題点は、基幹インフラネットワークの事業者が、自らの旧式で脆弱なネットワークに対して、セキュリティ製品の導入を検討しようともしないところにある。これは悪意を持ったハッカーらの目の前でドアを開け放しているようなものだ」と述べている。
水源やダムのセキュリティに対する注意は十分に行き届いているとは言えないため、特に懸念される。Medairy氏は「こういった業界における顧客の環境に目に向けると、いささかおかしい部分が見えてくる」と述べ、特に従業員が旧式のIoTデバイスを個人的に使用し、仕事中にそのデバイスでインターネットに接続している点を問題視している。
米国立標準技術研究所(NIST)でコンピュータセキュリティ部門の責任者を務めるMatt Scholl氏によると、IoT製品は全体として見た場合、セキュリティについて十分に考慮されていないという。なお、NISTはこの件に関する報告書を7月に作成し、基幹インフラにおけるサイバーセキュリティの強化に向けたフレームワークの必要性を提言している。
Scholl氏は「IoT製品に機能の一部としてセキュリティが組み込まれていたら本当に素敵だろう。それは素晴らしいものとなるはずだ。そしてわれわれが顧客として声を上げ、(中略)この点をIoTベンダーに強調し、彼らに動機を与えることができればさらに素晴らしいはずだ。つまり、映画『フィールド・オブ・ドリームス』のせりふにある『それを作れば、彼ら(顧客)がやって来る』というものではなく、『彼らがそれを作るよう、われわれが仕向けなければならない』のだ」と述べるとともに、「危機が実際に訪れるのを待つのではなく、製品のセキュリティと信頼性を向上させ、プライバシーを高めるための作業を行う人々の背中を押せるだけの動機を与えるとともに、その努力に報いる何らかの方法が必要なのだ」と述べている。
SAPのバイスプレジデントであり、グローバルイノベーションエバンジェリストでもあるTimo Elliott氏は「現在目にする多くのIoTデバイスは、コンシューマー向けのものとなっている。また、設計当初からセキュリティを考慮するのは簡単ではないため、そういったデバイスはセキュリティ面で著しい問題を抱えている。これは簡単にハックできるようにするという、メーカー側の意図的な決断だと言ってもよいだろう」と述べている。