Windows 10 Mobileは法人市場を狙う、Lumiaへの投資も継続

取材・文:阿久津良和 構成:羽野三千世

2016-09-13 12:13

 日本マイクロソフトは9月7日、Windows 10の法人展開に関する記者向け説明会を開催した。同社 Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャー 浅田恭子氏は、「企業向けデバイスは新たな成長局面を迎えた。われわれは法人市場をコアに置いたWindows 10 Mobileと共に、エンドツーエンドソリューションにつなげていく」と説明した。


日本マイクロソフト Windows&デバイス本部 Windowsコマーシャルグループ シニアエグゼクティブプロダクトマネージャー 浅田恭子氏

 2015年7月に登場し、消費者市場には一定段階の普及を終えたWindows 10。多くの企業は検証段階を終え、試験的導入などを始めつつある今の機を狙い、日本マイクロソフトは法人市場への訴求を強めていくという。

 既に三井住友銀行はOffice 365とMicrosoft Azureを中核に、Windows 10およびWindows 10 Mobile、モバイルデバイスを管理するEMS(Enterprise Mobility +Security)の導入を5月に発表。同行は三井住友フィナンシャルグループへの導入についても計画している。8月には北国銀行が、営業スタイルの変革と自行の文化を変えることを目的に、全行員2400人へWindows 10 Mobileデバイス「MADOSMA Q501A」を配備し、シームレスな労働環境を構築した。日本マイクロソフトは、「Windows 10 Mobileへの期待が上がっていると感じている」(浅田氏)と語り、この展開を加速させていく。

Surfaceの“デザイン性”も法人導入の理由

 日本マイクロソフトはWindows 10法人ビジネスの4本柱として「デバイス」「セキュリティ」「サービス」「ライセンス」を掲げている。

 デバイスのビジネスについて浅田氏は、IDC JapanがまとめたポータブルPCやスマートフォンなど各種デバイスに関する2016年第1四半期の実績と2016年~2020年の予測「Japan Quarterly Mobile Device Tracker 2016Q1」を引用し、「OEMベンダーや販売業者と話をしていても、2016年から緩やかながら復調傾向にあると感じる」と述べた。そのポイントとなるのが、法人市場におけるPC需要でもデザインが重視される傾向だ。「Surfaceを選択した顧客は、その理由を“格好いいから”とおっしゃっていた。また、(購入した企業の)自社ブランドを高める面でも役立つという意見もあった」(浅田氏)

 さらに、PCのスペックは年々向上しているので、新しく高スペックなPCを導入することで、これまでは社内でしかできなかった仕事を外へ持ち出すことが可能になる。このような“ワークステーションのモバイル化”の市場が生まれつつあり、これらの理由でWindows 10搭載PCが評価されているという。

LumiaもOEM製スマホもアップデートし続ける

 一方で法人市場をメインターゲットとして展開中のWindows 10 Mobileだが、PCもタブレットもあるのにスマートフォンがないのは「欠けた環のようだ、と顧客に言われている」(浅田氏)

 既に日本国内でWindows 10 Mobile搭載デバイスは12社14機種が発表、もしくは発売済みであり、EMSなど管理ソリューションも用意している。現在Windows 10 Mobileの開発スタッフはMicrosoftのお膝元であるレドモンドに集結し、Windowsプラットフォームの一環として開発されている状態だ。浅田氏はMicrosoft EVP Windows and Devices Terry Myerson氏の「LumiaやOEMパートナーのスマートフォンを今後もアップデートし、サポートしていく」という発言を元に、「エンドツーエンドソリューションへつなげつつ、パートナー製デバイスに対してもエコシステムを強化していく」と語った。

Windows 10のセキュリティの考え方とは

 「セキュリティ」に関しては、Windows 7とWindows 10の機能を比較。Windows 7時代はストレージを暗号化し、データ盗難や漏えいを防ぐBitLockerを重視する企業が多かったという。

 だが、Windows 10の時代は「セキュリティは破られるもの」という考え方を元に、カーネルのコード整合性サービスを分離し、安全なアプリケーションだけを実行可能にする「Device Guard」や、似たロジックでドメインの派生資格情報を保護する「Credential Guard」、サイバー攻撃を検知してアラートを出す早期侵入検知サービス「Windows Defender ATP(Advanced Threat Protection)」などの利用を訴求していく。


indows 7とWindows 10のセキュリティ機能を比較したもの。灰色の部分がWindows 7。青色および赤色はWindows 10のセキュリティ機能となる

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