ルーマニアにおいて、ある銀行の支払いサービスや、ATMでの現金引き出しがおよそ10時間にわたって停止した。その原因は、データセンターの消火設備にあった。
この奇妙かつ珍しい事件は、オランダの多国籍企業であるINGグループ傘下のING銀行がルーマニアのブカレストに設置しているデータセンターで発生した。事前に予定されていた消火設備のテストにおいて、消火用の不活性ガスを放出する際の大音量が原因で機器に障害が発生し、オンラインシステムの停止を招いただけでなく、システムに接続されていた多数のハードドライブが破壊され、取り返しのつかない深刻な被害がもたらされたのだ。
INGのリテールバンキング部門の責任者であるDaniel Llano氏は現地時間9月11日、INERGENガス(不活性ガスと窒素、二酸化炭素を混合したガス)の放出によって「技術上の深刻な問題」が発生したことを顧客に伝えた。
このデータセンターに設置されている消火システムは、泡や液体を使用する従来型のものとは異なり、INERGENガスを使用するタイプとなっている。INERGENガスは閉鎖空間での使用に適しており、加圧された状態で金属製のボンベに格納されている。火災時には、これらのボンベからホースを伝って運ばれたガスがノズルから狭いスペース全体に均等に放出され、火災を消し止めるようになっている。
この種の防火対策は通常、データセンターに最適だとされている。というのも泡や液体を用いた消火では特に、重要かつ精巧な機器に損傷を与えるためだ。しかし今回の場合、予想もできなかった事態が引き起こされた。
ノズルからガスを放出する際の圧力が高すぎたため、とてつもなく大きな音が発生したのだった。
INGの広報担当者がMotherboardに語ったところによると、「消火訓練は計画通りに進んだが、付随的損害が発生した」という。
Motherboardがある情報筋から聞いた話では、訓練で発生した音量は想定していたよりも大きく、銀行の計測機器の測定上限ほどで、130デシベルを超えていたという。不幸なことに、音による振動がデータセンター内に設置されていたハードディスクドライブの筐体に伝わり、内部のコンポーネントを破損させる結果となった。
Motherboardによると、訓練時はまるで「ジェットエンジンのかたわらにストレージシステムを置いた」という形容がふさわしい状況だったという。
これによりサーバやデータストレージに障害が発生し、カードのトランザクション処理や、ATMの利用、インターネットバンキング、電子メール、同銀行のウェブサイトに影響が及んだ。現在、サービスは既に復旧しており、顧客はATMからの出金や、カードを用いた取引が可能になっているものの、同銀行はバックアップデータセンターに依存する状況となっている。
Llano氏は「こうした状況のための緊急措置と復旧計画を発動させた」と述べるとともに、「しかし、障害は規模が大きく、複雑だったため、バックアップシステムによる運用の再開に要した時間は残念なことに、定期的に実施しているテストにおける再開までの時間よりも長くなってしまった」と述べている。
同銀行はサービスの再起動を余儀なくされた。また、考えられ得る限りの予防措置を講じるために、データベースの追加コピーも取得した。さらに、修復に多大なコストがかかるであろう今回のような事件が2度と起こらないよう、詳細を明らかにするための調査も開始されている。
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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。