Teradataのユーザー企業が主体となってデータ分析の活用事例を発表する年次コンファレンス「Teradata PARTNERS Conference 2016」を9月11日からジョージア州アトランタで開催した。
31回目を数える今回のテーマは「Data.Changes.Everything.」。企業がデータ駆動型のビジネスにシフトする状況において、「いかにデータを活用するか」は大きな経営課題となっている。企業の意思決定や業務プロセス改善だけでなく、IoT(Internet of Thing)など、製品から収集できるデータを活用することで、既存ビジネスとはまったく異なる領域のビジネスを展開する企業も増加している。
Procter&Gamble(P&G)やCoca-Cola、Expedia、LinkedInなど、最先端のデータ活用企業が登壇し、自社の活用事例を紹介している。
Teradata PARTNERS Conference」。今年は世界46カ国から約3000名が参加。オンライン上のバーチャル参加者も約1500名に上ったという。日本からは例年と同じ約40人が参加した
9月12日の基調講演では、5月に同社最高経営責任者(CEO)に就任したVictor L. Lund氏や、同社の研究部門であるTeradata Labsでプレジデントを務めるOliver Ratzesberger氏らが登壇。マルチクラウド上で「Teradata Database」が利用できるコンセプト「TERADATA Everywhere」を発表するとともに、今後のビジネスの方向性を「技術フォーカス」から「ビジネス・フォーカス」に軸足を移すと明言した(関連記事)。
顧客体験の向上が企業の成長に直結
基調講演冒頭に登壇したのは、今回のホステスを務めるInternational Hotels Groupで、グローバル・テクノロジー部門バイスプレジデントを務めるCynthia Czabala氏だ。同グループは、世界100カ国以上でInternational、Holiday Inn、Crowne Plazaなど、複数のブランドホテルを5000軒以上の展開している。
Czabala氏の部門の命題は、顧客に関するあらゆるデータを分析し、パーソナライズされたサービスを提供することだ。「顧客は“自分だけ”のサービスを求めている。それに応えることが大きな課題であり、競合他社との差別化ポイントになる」(Czabala氏)
今回のホステスを務めたInternational Hotels Groupでグローバル・テクノロジー部門バイスプレジデントを務めるCynthia Czabala氏
「パーソナライズされたサービスは、ロイヤルカスタマーの育成に大きく貢献し、そのロイヤリティがブランド力を強化する」とCzabala氏は力説する。その戦略の一環として同グループは、IoTを利用したデータ活用にも注力している。
具体的には、顧客が適温と感じる室内温度をデータ化し、次にホテルを訪れる際には室内を“顧客の適温”に設定したり、前回宿泊時に視聴していたテレビチャンネルを優先的に提示したりするといった具合だ。Czabala氏は「(顧客に関する)多くの知見や洞察の根源となっているのはデータである。われわれがTeradataをビジネスパートナーに選んだ理由は、顧客に優れた体験を提供できるデータ分析ソリューションを有しているからだ」と、Teradataの分析力を評価した。
続いて登壇したLund氏は、Teradataのビジネスについて、「新たな戦略に移った」と語り、「技術フォーカスから、(顧客のビジネス課題を解決する)ビジネス・フォーカスに軸足を移す」と明言した。
米Teradata最高経営責任者(CEO)のVictor L. Lund(ビクター・L・ランド)氏
Lund氏はこれまでのTeradataのビジネス戦略について、「テラデータが有する技術は揺るぎないものであるし、顧客も(Teradataの)技術を評価している。しかし、技術にフォーカスするあまり、顧客(のビジネス課題)に耳を傾けてこなかった」と総括した。
その上で「今後はビジネスソリューションの提供にフォーカスする。顧客の課題解決を最優先し、その解決手段をシームレスに提供していく。顧客が求めているのは課題解決であり、ビジネスの成長だ。技術は(課題解決の)手段であり、目的ではない」と、コンサルティングを核とするソリューションビジネスに注力していく姿勢を鮮明に打ち出した。
Lund氏がもう1つ強調したのは、エコシステムの強化である。同社ではグローバルでのビジネス戦略の1として、「分析エコシステム」を掲げている。同社の分析プラットフォームである「Teradata Aster」は、Hadoop、Cloudera、HortonといったOSSだけでなく、Microsoft AzureやAmazon Web Services(AWS)でも利用可能だ。「顧客から信頼できるパートナーであり続けるためには、アーキテクチャエコシステムを確立し、(顧客の環境に応じて)シームレスに技術を提供していくことだ」(同氏)