VMwareの年次イベント「VMworld 2016」は、主力製品の「vSphere」よりも、コンテナ、マルチクラウド環境での管理が目玉となった。このようなVMwareの動きを「市場をよくみている」と評価するのが調査会社の株式会社アイ・ティ・アール(ITR)でプリンシパル・アナリストを務める生熊清司氏だ。イベント会場で生熊氏にVMwareの戦略を評価していただいた。
--今回のVMworld全体を通じてどんなことに注目しましたか
株式会社アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト 生熊清司氏
人の賑わいや参加者の年齢層などから、VMwareの市場に対する影響力は変わっていないと感じた。
VMwareはデスクトップ仮想化からスタートしたが、その名を企業ITに知らしめたのはやはり、サーバ仮想化である。その基幹製品「vSphere」を土台に、ここ数年間仮想化の対象をネットワーク「NSX」、ストレージ「Virtual SAN」と拡大してきた。SDDC(ソフトウェア定義データセンター)という構想を立て、実現してきている。
製品スタックを拡張してきたが、売上をみても成果は出ており、2011年度から2015年度の5年間でライセンス売上は148%と増加している。
--今回VMwareは「Cross-Cloud Architecture」を発表しました。「vCloud Air」を推していたのと比べると、戦略の変更と言えるでしょうか。
VMwareを見ていて感じるのは、市場をよく観察しているということ。インフラの会社はアプリケーションの会社とは違って技術主導なところがあり、ニーズというよりシーズベースに製品を投入し、後から市場を作っていくというやり方が見受けられる。だがVMwareは自社でさまざまな市場調査をしており、市場と顧客の要求をしっかり把握している。
Cross-Cloud戦略もその結果と言える。市場を見るとAWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azureなどが強い。顧客がいま何を使っているのかを調べ、その要求をベースに立てた戦略と言えるだろう。
仮想化は企業規模に関係なく導入が進んでおり、サーバ仮想化はかなり成熟している。当初から用途も変わってきており、テスト用途だったりファイルサーバなどの基幹系ではない用途だったものが、今やOracleやSAPなどの基幹系アプリケーションが動くものも仮想化するのが当たり前になりつつある。
vSphereはかなり成熟しており、先の拡大戦略でインフラすべてを仮想化し、その次にハイブリッドクラウド、そしてマルチクラウドを出してきた。これは顧客ニーズをみてこその戦略だと思う。