老化の予測に広げる夢
開発した排泄予知デバイスは、アプリケーション、モバイル端末などと組み合わせたクラウドサービスとして提供する。月額使用料は「1カ月程度のおむつ代」(中西氏)、つまり1万5000円程度を目下のところ考えているという。当面のターゲットは介護福祉施設にした。海外の介護福祉施設業者からも「現場を視察したい」という声があり、手ごたえを感じているようだ。
一方、在宅介護向けには、いくつかの課題を解決する必要がある。例えば、老々介護や独居老人がスマートフォンなどモバイル端末を簡単に使いこなせる仕組みや機能を備えているかだ。排泄予知デバイスの小型化、よりやわらかい素材にするなど改良、改善も図っていく。検知する体内変化も排泄だけではなく、食欲、生理などへ広げていく。
さらに、体調の変化から老化の予測、寿命の予測へと進化させる可能性を模索する。中西氏によると、寿命は遺伝子と、たばこを吸うなどといった生活習慣、生活環境にも影響をうけるという。
排泄など体調の変化にも現われる。こうした体内の変化などから寿命を予測できたら、人は健康管理にもっと気をつけるだろう。「倒れたら、寝たきりになったら、誰に介護してもらうのか」を前もって考えられる。「糖尿病の予備軍」との検査結果が出ても、病院に通わない人が「このままだと、来年にも……」とデータで示されたら、考え方を改めるかもしれない。
在宅などの介護は、大きな社会問題でもある。33歳になる中西氏は2040年を目標にそんな老化予測サービスの実現性を探っている。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。