Oracleは先週、「NetBeans」から手を引く姿勢を見せた。同社は、Javaベースの開発環境であるNetBeansのプロジェクトを、Apache Software Foundationに移管するとの提案を行ったのだ。しかしOracleは、NetBeansや「Java Enterprise Edition」(Jave EE)に対する消極的な態度を変えつつある。
ただ、勘違いはしないでほしい。OracleがNetBeansの管理を望んでいないのは変わらない。しかしOracleは、同社がNetBeansのコードを投げ出してしまうわけではないと主張している。Oracleでモバイル開発プログラムおよび開発者ツール担当バイスプレジデントを務めるBill Pataky氏は、筆者へのメールの中で、「OracleはNetBeansのガバナンスモデルをオープン化しようとしているのであり、サポートをやめるわけではない。Oracleは、NetBeansに依存している製品を3つ持っている」と述べている。具体的には、「Oracle Developer Studio」「Oracle JDeveloper」「Oracle JavaScript Extension Toolkit」だ。
Pataky氏はまた、「OracleはApacheで26人の開発者をコミッターとして登録しており、この数字は今後増えていくと考えている」とも述べている。
NetBeansのサポートよりも大きな問題は、開発が進んでいないJave EEについてOracleがどう考えているかだ。
Javaの生みの親であり、Oracleのクライアントソフトウェア担当最高技術責任者(CTO)を短期間務めたJames Gosling氏は、疑念を持っている。
Gosling氏はOracleが2010年にSunを買収してから間もなく同社を離れた。その理由は、OracleのJavaの管理に対する対応で「疲れ切ってしまった」からだという。
それ以来Gosling氏は、OracleのJavaに対する方針が改善することに期待していない。2016年夏には、OracleにJava EEの仕様策定推進を求める団体である「Java EE Guardians」と呼ばれるグループが発足し、Gosling氏やその他のJave EEのリーダーが参加している。同氏らは、「Oracleは明らかにJava EEを軽視しており、Java EE開発の推進に依存している、非常に幅広いエコシステムを弱体化させている。...問題は、このことが、Oracleがオープン標準ベースの協力による開発アプローチを敬遠し、非常に独自色の強い、一方的な進め方を追求しているために起きている可能性があるということだ」と述べている。
OracleがJave EEに関して独占的な態度を取っているのが本当だとしても、同社が今回、Jave EEやその他のJava関連技術について、ようやく多少の見通しを示したことは確かだ。
Oracle主催のカンファレンスであるJava Oneで、Oracleエンジニアリング担当グループバイスプレジデントAnil Gaur氏は、「Java EE 8」の開発スケジュールが遅延していることを認めた。「当社は、(Java Specification Requests 366:JSR366で)Oracleが提案したものの一部が時代遅れになっているため、再計画を進めている最中だ。フィードバックを得たら、この仕様を確定させる。目標は、来年中に仕様を確定させ、リリースすることだ」(Gaur氏)
Gaur氏のコメントは、Jave EE 8がリリースされるまでに、さらに多くの作業が必要になることを強調することになった。Gaur氏は、Oracleのリーダーシップが不足していることには触れず、同社が「Jave EEがクラウドに導入されていることや、多くのベンダーがマイクロサービスアプリケーションの開発にJave EEのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を使い始めていることは喜ばしいが、それらの取り組みはそれぞれ独自のやり方で進められており、この領域に標準が存在しないため、互換性や移植性を確保するのは不可能な状況になっている」と不満を述べた。
またOracleは、Jave EE 8にRESTサービスを追加したいと考えている。Gaur氏はこれに関して、「クラウドサービスはRESTサービスとして提供されており、JavaScript Object Notation(JSON)を使用して非同期通信を行っている。また、NoSQLデータストアの利用も増えている」と述べている。それに加え、Jave EEではコンテナもサポートされるようになるという。
これは、すでに何年も遅れているプロジェクトへの追加内容としては、かなり大きい。
だが少なくとも、OracleがNetBeansとJave EEに関して前向きな話をしたことは確かだ。次に問われるのは、約束が実際に実行されるのかということだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。