Oracleは「Adaptive Intelligent Applications」で、Salesforce.comは「Einstein」で人工知能(AI)の活用をうたっている。また、IBMの「Watson」やMicrosoftの「Cortana」、SAPの「HANA」などのセールスポイントとして機械学習やAIといったキーワードが登場する。こうした状況に目を向けると、AIがマーケティング分野のキーワードとなりつつある点は疑問の余地がないはずだ。
ビジネス市場を狙うIT企業の多くは、AIをキーワードにしてマーケティングを展開している。
企業向けソフトウェアを手がけるプロバイダーは、顧客企業が扱う多くのデータにアクセスする機会を有している。そして今や、こういったプロバイダーはWatsonやEinstein、Alexa、Siri、Cortanaといったさまざまなキャラクターを前面に押し出すとともに、多くの専門用語を散りばめて、AIの力を借りた洞察を提供しようとしており、できればIT関連作業の自動化も実現したいと考えている。
このため企業からすると、IT関連作業の自動化には至らず、キャラクターと専門用語に振り回されるだけに終わる可能性も十分にある。
AIをキーワードとする傾向があるのは誰の目にも明らかだろうがここであらためて、SalesforceによるEinsteinの概要説明に目を向けたい。なおこの概要説明は、サンフランシスコでの「Oracle OpenWorld 2016」におけるOracleの最高技術責任者(CTO)Larry Ellison氏の基調講演の翌日に行われたものだ。
Salesforceは、AIプラットフォームであるEinsteinのローンチに際して、同社の製品や、その他のタッチポイントを通過するすべての顧客関係管理(CRM)データをバックグラウンドで活用したいと考えている。Salesforceのうたい文句は、全員がデータ科学者になるというものだ。
Ellison氏はつい先日の基調講演で、Oracleが保持しているコンシューマーデータの量はFacebookが保持している量と変わらない点を指摘した。同氏は、インテリジェントなアプリケーションやクラウドツールはデータがあってこそだと力説している。つまり、デジタルマーケティングや情報市場を手がけるBlueKaiのような企業を買収し、サービスとしてのデータという路線を採用するとともに、すべてのアプリケーションをインテリジェントなものにしようとしているのだ。
Ellison氏は次のように述べている。
世の中にはコンシューマーを追跡している、言葉を換えればコンシューマーに関する多くの情報を蓄積している巨大データベースが2つ存在している。1つは非常に有名なものだ。それはFacebookと呼ばれている。そしてもう1つはあまり知られていない。それはOracleの「Oracle Data Cloud」だ。われわれのデータクラウド内にはFacebookが保有しているよりも多くのコンシューマー情報が蓄積されている。