OracleとSalesforce.comはいずれも、機械学習や自然言語でのやり取りが可能な人工知能(AI)搭載アプリの提供を約束している。本記事では、両社の技術の背景にあるものと、製品の登場時期について解説する。
OracleとSalesforceはいずれも先週、「AI」イニシアティブを発表したものの、両社が約束する製品の適用分野や規模、展開のペースはおろか、AIについての語り口すら異なっている。
まずはじめに述べておきたいが、両社ともSF映画の「アイアンマン」や「スタートレック」「ターミネーター」「2001年宇宙の旅」に登場するような、人間に近い汎用目的のAIについて語っているわけではない。そうではなく両社は、閉ループ機械学習(CLML)とデータ科学を適用した「賢いアプリ」によって顧客のデータとサードパーティーのデータを組み合わせ、人を支援していくということを語っている。これと並行して一部のアプリでは、自然言語処理や音声認識、マシンビジョン(MV)といった技術を活用した、人とマシンの間での双方向のやり取りが実現されるはずだ。

「Oracle Adaptive Intelligent Applications」は、ウェブスケールの「Oracle Data Cloud」と、同社の莫大なクラウド計算資源を活用する製品だ。
こういったタスクを上手に実行するには、膨大なコンピュートパワーと、大量のデータ、数学やデータ科学に関する豊富な専門知識が必要なだけではなく、製品を開発するための十分な時間も必要となる。それではSalesforceとOracleがそれぞれ提供するとしているものを順に見ていくことにしよう。
「Salesforce Einstein」の概要
Salesforceは先手を取るという意図のもと、9月の初めに「Salesforce Einstein」について言及した。そして、「Oracle OpenWorld 2016」におけるOracleの発表に日を合わせた19日、公式にプレスリリースを発表した。Einsteinは既存のSalesforceアプリケーションを拡張するという目的で設計されたものであるため、その能力は「Sales Cloud」や「Service Cloud」「Marketing Cloud」「Analytics Cloud」「Commerce Cloud」「IoT Cloud」「Community Cloud」内に埋め込まれたかたちで実現されるはずだ。またSalesforceは、顧客が自らの「賢いアプリケーション」を開発できるよう、同社の「App Cloud」開発プラットフォームからEinsteinのサービスとAPIを利用可能にもする。
Einsteinの設計目標は、洞察を得たり、結果を予測したり、最善策を推奨したり、作業を自動化したりすることとなっている。このため、例えばセールス分野では、営業機会についての洞察がもたらされるとともに、予測リードスコアリングが提供され、コネクションや次に採るべき手段が推奨され、顧客との電話やその他の手段を通じたやり取りの記録といった簡単な作業が自動化される。