Microsoftが7月にカナダのトロントで開催した「Microsoft Worldwide Partner Conference 2016」(WPC 2016)の最終日、日本からの参加者向けにイベントのメッセージをまとめて伝えるセッションを日本マイクロソフトが開催した。この中で注目を集めたのは、エバンジェリスト、西脇資哲氏が「IoT(Internet of Toilet)」として実施したプレゼンだった。
エバンジェリスト、西脇資哲氏
Internet of Toiletは、品川にある日本マイクロソフトのオフィス内にある1つのトイレに、複数のセンサを設置し、混雑状況を把握するという実験的な取り組み。さらに機械学習を導入し、データを分析していくような仕組みを提供していくイメージを持っている。
トイレに設置したセンサからのデータを集計して得た知見として、「朝10時から10時30分、13時~13時30分が最も利用が集中する」「10時~10時30分はすべてのトイレが埋まっている」「手前のトイレより奥のトイレが利用される」「隣同士より間を空けてトイレが利用される」といったことを西脇氏は挙げている。
ここで、機械学習を用いることにより、トイレの混雑状況を予測したり、予定や体調を見ながらトイレを利用できるようになる。さらに、ボットを加えることで、LINEなどでトイレのリアルタイムの混雑状況を尋ね、空きを確認できるといったサービスも実装可能とする。
誰もが使うトイレを題材に取り上げ、WPC 2016のトピックに挙がったデジタル化、IoT、機械学習といったキーワードを説明し切った西脇氏のプレゼンテーションに、「さすが」と称賛の声が上がった。
トイレの使用率をソフトウェアで把握できる
Internet of Toiletのポイントは、今までデジタル化を考えなかった場をデジタル化することによって、その場に従来はなかった価値が生まれることだと言える。
例えば、東京メトロのとある駅から、有名ホテルの目の前につながる500メートル以上はあろうかという長い通路がある。各業界の主要企業も入居するビルにもつながっているが、その通路全体で壁がまったく活用されていない。
もちろん、景観的な配慮で広告掲載場所などとして使われていない可能性もあるが、単純に見るともったいない。例えば「通勤時間は他地域よりも比較的30代女性の出現率が高い」といったデータが得られれば、「M字カーブ」と呼ぶ、女性の労働力率が出産や結婚で低下する現象の影響を受けやすい消費財を販売するメーカーや小売業が、ピンポイントで時間を指定した広告を打つかもしれない。
大画面のデジタルサイネージを導入し、データに沿って時間ごとに細分化して効果的な広告を配信すれば、これまでまったく収益を生み出さなかった壁を体系的に活用し、計画的に利益を得る機会が生まれる。
いずれにしても重要なのは、デジタルデータが蓄積されているということ。データの裏付けがなければ、その広告面を売りに出すこと自体が難しい。
もちろん、広告は単なる想定例である。上記ならデータ自体を売るような事業機会もあるかもしれない。「何をデジタルデータ化してどんな商売をするのか」。面白いと素直に思える企業は強い。