実際、パブリッククラウドへの移行が進展すると、Red Hatに有利に働く可能性もある。Oracleの最高技術責任者(CTO)Larry Ellison氏は、先日「Amazon Web Services」を鋭く批判した。同氏は、AWSの利用者はロックインされていると指摘し、同社の「RDS」や「Aurora」などのデータベース製品を槍玉に挙げた。Ellison氏の主張のポイントは次の2つだ。
- Ellison氏があれほどAWSに対して攻撃的だということは、AWSはOracleからかなりのデータベースワークロードを奪っていると考えられる。
- Ellison氏のクラウドプロバイダによるロックインについての主張には一理ある。
大企業は、クラウドプロバイダによるロックインのリスクを意識している。また、テクノロジ業界のリーダーたちは、Ellison氏のAWSに対する攻撃に滑稽さも感じている。なぜなら、Oracleもまた、これまである程度ロックインの恩恵を受けてきたからだ。
特定のクラウドスタックを選んで、専用のAPIを使用する顧客は、なんらかの形でロックインされざるを得ない。これが、OpenStackがこれほど人気を集めている理由だ。
これらのことはRed Hatにとって何を意味するのだろうか。Whitehurst氏は、「われわれの考えでは、大規模な顧客は、どこでも実行可能であることに価値を見いだしている。これらの顧客は、標準的な運用環境を求めており、クラウドでもLinuxを利用したいと考えている」と述べている。
Red Hatに対する懸念を口にしている人たちは、パブリッククラウドへの移行が進むと、AWSがLinuxの事業を侵食すると主張している。しかし、必ずしもそうなるとは限らない。「パブリッククラウドへの移行が進むほど、わが社の競争力は増す。Amazonに移行しようとすれば、ロックインされないような設計を行う必要がある。大企業はロックインされることにはうんざりしている」とWhitehurst氏は主張する。
つまり、Red Hatの製品はロックインを避けるための抽象レイヤとしての役割を果たしているということだ。OpenShiftを始めとするRed Hatのツールは、ワークロードをクラウド間で移動することを可能にする。
しかし、もしAWSがRed Hatにとって脅威となった場合、同社はどうするのだろうか。Whitehurst氏はこれを問題にしていない。同氏は、プライベートクラウドやデータセンターの世界でも、インフラの半分はWindowsで動いていると指摘する。「私はむしろ、現在は獲得できておらず、今後も獲得できないWindowsが持っている半分のシェアよりも、AWSのLinuxと競争することになると考えている」と同氏は述べている。
実際、MicrosoftのAzureに移行されるワークロードでは、かなりの割合でRed Hatの製品が使われている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。