大谷氏:これをどこかでスケールさせるためには、すでにエンドユーザーの企業とおつきあいのあるSIやコンサルティング会社など、顧客の業務を一通りわかっているところがシステムを運用しないといけません。特に金融はアウトソースする場合が多いので、その中抜きをしても、市場として実用化していくときの壁になると思います。遠回りのようですが、エンドユーザーやSI、コンサルタント、スタートアップの3者がうまくつながったときに普及するでしょう。
大谷健(日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 クラウド&サーバー製品マーケティング部 エグゼクティブプロダクトマネージャー
今はイノベーターがやっている部分に、アーリーアダプターやレイトマジョリティが来ることがあるので、実証実験はバンバンやっていいと思います。クラウドの初期のように「クラウドとは何か」ということは、5年後には説明しなくなっている。ブロックチェーンファーストという言葉を最近は使っていますが、「まずブロックチェーンを考えて、そこに当てはまらないなら従来のままでいい」というマインドを持っているユーザーやSIが、スタートアップの方々と一緒に取り組んでほしいです。
杉井氏:そうですね。SIにも2種類あって、「自分たちでOJT(日常の業務を通じた従業員教育)をして会社の中にできる人たちを増やすんだ」という気構えのあるところと、ぜんぶ外注のところがあります。どっちと仕事をしたいかと言うと、絶対に「OJTで自分たちのできることを増やすんだ」というところで、そこに技術移転をしたいのです。
われわれのようなスタートアップが技術移転してしまうと競争力を失うのではないか、とよく言われます。でも逆です。どこに行ったってエンジニアがいて金をかけて求人すれば人が来るという世界ではないからです。そういう状況もありますし、また僕らがすべての開発に携わることはできないですし、さらには運用になったら手も足もでないほどリソースが足りない。
そういうときに「エンジニアがまったくいません」となるよりは、業務を知っている人がいたほうがキャッチアップは絶対に早い。うちのエンジニアたちは業務に関しては何をやったらいいのかわからないので、けっこう遅い。自分で学んでいれば興味のある人は掘っていけるのですが、実務を知っていて、問題解決したほうが絶対に早い。
朝山氏:僕は20年以上この業界でやってきましたが、今回のブロックチェーンは一番発想の転換が必要とされる新規テクノロジです。そういう意味では、教育コストもかかります。
杉井氏:そういう意味で、丸投げするSIではだめです。みずほフィナンシャルグループの案件はISID(電通国際情報サービス)がSIとして入りましたが、彼らはOJTで人を5人くらい入れてきました。この5人という数字がどれだけ多いかというと、うちでその業務に携われるエンジニアの数と同じです。つまり、そちらに技術移転しているので、ここからは増えていくと思います。われわれよりずっと大きい企業ですから、何か仕事があれば、逆にうちが外注したいです。そういう感じでいいんじゃないかと思いますね。