編集部からのお知らせ
Topic 本人認証の重要性
宇宙ビジネスの記事まとめダウンロード
日本株展望

JR九州の鉄道事業が今期初めて黒字になる理由

ZDNet Japan Staff

2016-09-28 12:15

今日のポイント

  1. JR九州は2017年3月期、創立来初めて鉄道事業が黒字化する見込み。2016年3月期に行った鉄道固定資産の減損と新幹線利用料の前払いによって、2017年3月期から鉄道事業の費用が約320億円減少することが、黒字化の主な要因
  2. JR九州の強みは、駅ビル不動産など多角化事業で安定的に高収益を上げていること、インバウンド需要の追い風で九州新幹線や豪華観光列車の業績が伸びていること
  3. JR九州は成長性では先に上場しているJR3社に見劣りするが、想定価格2450円での年率配当利回りは約3%と、まずまずの水準となる見込み

 これら3点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

鉄道事業を黒字化させ、悲願の上場を実現

 10月25日にJR九州が東京証券取引所に上場する。想定価格2450円で計算される時価総額は3920億円で、大型の新規上場(IPO)となる。

 JR九州は分割民営化によって発足した1987年以降、鉄道事業が黒字になったことが一度もないが、2017年3月期初めて黒字になる見通しだ。

JR九州の連結業績

JR九州の連結業績
(出所:JR九州の開示資料より、楽天証券経済研究所が作成)

 2016年3月期は鉄道事業を含む運輸サービスが105億円の営業赤字だったが、2017年3月期は230億円の営業黒字への転換を見込んでいる。鉄道事業の黒字化で2017年3月期の連結営業利益は、会社予想によると前期比2.5倍の518億円となる見込みだ。

 一見すると、とても美しい決算見通しだが、その裏には、2016年3月期に行った特殊な決算処理が絡んでいる。

鉄道事業を黒字化させるのに貢献した2つの会計処理

 過去29年赤字だった鉄道事業がいきなり黒転するのは、2016年3月期に行った2つの会計処理の結果だ。鉄道事業の競争力が突然強くなったわけではない。

  1. 2016年3月期に鉄道事業の固定資産で5000億円を超える減損損失を認識している。その効果で、2017年3月期から鉄道事業の減価償却費が約220億円減少する
  2. 2016年3月期に九州新幹線の鉄道施設使用料2205億円(約20年分)を全額一括前払いしている。その効果で、2017年3月期から新幹線貸付料が約100億円減少する

 (1)と(2)を合わせ、2017年3月期に鉄道事業の費用は約320億円減少する。2017年3月期、JR九州の運輸サービス事業の営業損益は335億円の改善(105億円の赤字から230億円の黒字へ)を見込んでいるが、ほとんど全てが2016年3月期の2つの会計処理から生じていることがわかる。

JR九州の2つの強み

 将来に向けて期待される強みが2つある。1つは、鉄道以外の事業で安定的に高収益を上げる力があることだ。駅ビル不動産事業は、2016年3月期に営業利益で204億円を稼ぐ高収益事業だ。さらに大型商業施設の運営、ホテル、建設など幅広い多角化事業で毎年、安定的に利益を稼ぎ続けている。

 JR九州のもう1つの強みは、九州新幹線と観光列車事業が、アジアからの観光客増加で好調なことだ。不振だった鉄道事業にようやく成長の芽が出てきている。

 先に上場したJR3社(東日本、東海、西日本)は、いずれも新幹線が成長事業で最高益を更新する原動力となってきた。これに対し、JR九州は当初、新幹線を保有していなかったため、成長の元がなかった。2011年に九州新幹線が全線開通してからは新幹線に新たな業績拡大の期待がかかっている。

 加えて、「ななつ星」などの豪華観光列車、観光用にさまざまな趣向を凝らした“デザイン&ストーリー(D&S)列車”が観光客に人気を博していることも追い風だ。

 ところで、JR九州は、新規上場時に政府(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)の保有株をすべて売り出す。上場と同時に、完全民営化が一発で実現する。これでJR九州の経営を縛る「JR会社法」の適用から外れることができる。経営自由度が高まることでJR九州の積極経営が加速することが期待される。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

特集

CIO

モバイル

セキュリティ

スペシャル

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    なぜ、2021年にすべてのマーケターが「行動経済学」を学ばねばならないのか?

  2. セキュリティ

    SIEMとEDRが担うべき正しい役割とは?企業のセキュリティ部門が認識しておくべき適切なツールの条件

  3. クラウドコンピューティング

    デザインシンキングによるAIと課題のマッチング!現場視点による真のデジタル改善実現へ

  4. 経営

    なぜ成長企業の経営者はバックオフィス効率化に取り組むのか?生産性を高めるための重要な仕組み

  5. 仮想化

    Microsoft 365を利用する企業が見逃す広大なホワイトスペースとは?

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]