平野氏:メーカーの領域だと、インフォテリアのEAIソフトウェア「ASTERIA WARP」が使われている理由のひとつが「バグが入らない」ということです。システム同士をつなぐだけなのでバグが入らない。
杉井氏:イーサリアムは、チューリング完全(あらゆるプログラムを記述可能)でなんでも書ける言語だからダメだったんです。チューリング完全がすべて悪いわけではない。しかし語弊があるかもしれないけど、だからこそ生まれた事故なんですよ、The DAOの一件は。現実に見えたので良かったですよね。
杉井靖典氏 カレンシーポート 代表取締役 CEO
だから結局、先ほどのBPMやASTERIAのようなものはプロトコルにそれらが組み込まれているわけではないんです。イーサリアムの何がいけないかというと、それがデプロイしてしまったら書き換えられない点です。誰がどうやろうが書き換えられない。バージョン管理などのノウハウはありますが、1個デプロイしたものにアドレスがついてしまえば、それはもう動いてしまうので書き換えられない。これを外に出すべきなんです。外に出したら、こっちのプロトコルはOKだけど、こっちのコントラクトの方にバグが発見されたらちゃんと直せる、ということがオープンソースになっていたり検証できる機構があれば良いと思っています。当社はこういう技術を作っている会社ではないので、これから作ろうとしているIBMさんとかに頑張って頂きたいです。
朝山氏:NEM・mijinは完全にそっちで、半年前から考えています。そうしないとパフォーマンスもあがらないですからね。イーサリアムは無理やりな時系列の概念などをブロックに押し込んでいるので、ひとつ間違えると大変なことになる。
杉井氏:あとはそれを監査する機構がちゃんとあればOKだと思います。
ブロックチェーンの最大の弱点
小川氏:先日のThe DAOの件はブロックチェーン技術の将来の方向性に、一定の影響を与えているのでしょうか。
朝山氏:分散型ネットワークをひっくり返せるんだというのが、一番大きいんじゃないですか。
杉井氏:かなり影響を与えている。面白いなと思ったのは、ハードフォーク(被害アカウントに対し、流出済のDAO資金を返金するスマートコントラクト<契約の自動化>を投入)する前日までほとんどの人がこれに賛成していました。イーサリアム・クラシック(ハードフォークに賛成していない人が立ち上げたプロジェクト)のほうが笑われていたんですが、今はこれが盛り返してきていたんですよ。こうなったらどうなるんでしょうね。
僕は恣意的にハードフォークが決まったと思っていて、どちらかと言うと原理的に「クラシック推し」(中央の介入を否定し、分散型、検閲の否定といった理念)を掲げているのほうなんです。「イーサリアム推し」だった人は、みんなイーサリアムの提唱者Vitalik Buterin氏について行きましたがそうじゃない。たぶん間違っていることはひっくり返されるんだと思うんです。しかし、ここは難しいね。ここはあまり踏み込まないほうがいいのかもしれない(笑)。
朝山氏:難しいです。これは思想の話になっていくので。