川村氏:ただ企業のシステムとして考えたら、何かバグがあったときに戻せないのは問題ではないでしょうか。
杉井氏:それは設計の仕方があるんです。あとはパブリックなのかパーミッションドなのかの違いで、みんなで合意をとれれば「こっちのバージョンが最新ですよ」と切り替えられます。
朝山氏:それで銀行コンソーシアムが2つに割れたら面白いですね。残高は倍になる。(笑)。原理的にはありえますけどね。
小川氏:金融庁が2つに割れないかぎりは大丈夫だと思います(笑)。
杉井氏:ですのでThe DAOの件は、ブロックチェーンの最大の弱点を露呈しましたよね。
朝山氏:はい、そう思います。イーサリアム自体の弱点もです。
杉井氏:それがどうすれば起きないか、というプロトコルの強化は必ず必要です。
朝山氏:僕らはまったく逆方向から作っているので、事業的にいうとラッキーですね。シンプルな勘定エンジンから来ているから、瑕疵ができるだけないものを作って、次にステート型のスマートコントラクト(契約の自動化)エンジンを進化させようとしているわけです。実用ファースト・パフォーマンスファーストで。
朝山貴生 テックビューロ 代表取締役所長
小川氏:ブロックチェーン技術も、ある程度実績があって瑕疵が起きないものを利用していくほうがいい、という流れになっています。新しい技術は、今後なかなか採用されなくなるんでしょうか。
杉井氏:これは高度な質問だと思います。技術者からみると、何でもできるというのが夢です。だけど、それはエンジニアの見方なんですよね。業務から見ると、バグを含むというのがだめなのです。バグを含まなくて、もしバグがあれば是正できる仕組みが絶対に必要で、そこが今はブロックチェーンの弱点になっている。そこをどういう方式にすればうまくマネジメントできるのか。
朝山氏:あとはオープンソースだったりクローズドソースだったりの話もからんできますね。
杉井氏:業務システムは必ずしもオープンソースである必要はないと思います。ただ業務システムを動かす業務エンジン――ビジネス・ルール・エンジンのようなものは、オープンソースであったほうがいいと思います。
朝山氏:作る人間が信頼できれば、上のアプリケーションはクローズドでいい。
<6回に続く>