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Rethink Internet:インターネット再考

イノベーションは既存のテクノロジの「編集」によって生まれる(後編) - (page 2)

高橋幸治

2016-10-10 07:00

 「WIRED」の創刊編集長であるKevin Kellyの近著「<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則」(NHK出版)における以下の言葉は非常に示唆に富んでいる。

 現在の生活の中のどんな目立った変化も、その中心には何らかのテクノロジが絡んでいる。テクノロジは人間性を加速する。テクノロジによって、われわれが作るものはどれも、何かに「なっていく」プロセスの途上にある。あらゆるものは何か他のものになることで、可能性から現実へと撹拌される。すべては流れだ。完成品というものはないし、完了することもない。決して終わることのないこの変化が、現代社会の中心軸なのだ。

 常に流れているということは、単に「物事が変化していく」以上の意味を持つ。つまり、流れの原動力であるプロセスの方が、そこから生み出される結果より重要なのだ。

ケリー「<インターネット>の次にくるもの」(Amazon提供)
「WIED」の創刊編集長であるKevin Kellyの『<インターネット>の次に来るもの 未来を決める12の法則』(NHK出版)。7月に発売されたばかりで、今後のインターネットを中心としたデジタルテクノロジがどんな原理をもとに進化していくのかを12のキーワードと共につぶさに解説している(Amazon提供)

 Kellyの言う通り、「現在」とは「何かに『なっていく』プロセスの途上」のことであり、あらゆるテクノロジに「完成品というものはないし、完了することもない」わけだから、「未来」とはプロセスの途上で知らず知らずのうちにいつの間にか<なっている>ものなのである。

 Richard ・S・Wurmanの引用の中に「新技術は既存の技術にプラスされる」という指摘があるが、だからこそ私たちは確実に変容している「現在」をなかなか自覚できない。いつかどこかで劇的な変化をもたらす「未来」がやってくるのだろうという幻想を抱き続けてしまう。

 着目すべきは「結果=result」ではなく「過程=process」だ。インターネットの第2四半世紀は、さまざまな技術が個別的に発展しながら「未来」へ着々と向かっていく時代ではなく、さまざまな技術が連鎖的に溶融しながら不断に「未来」を現前させていく時代になるだろう。「Apple Watch」なども腕時計という既存のモノとして出発するが、やがて腕時計とはまったく別のモノに「なっていく」。いや、もう「なっている」のかもしれない……。

高橋幸治
編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。現在、「エディターシップの可能性」をテーマにしたリアルメディアの立ち上げを画策中。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。

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