今日のポイント
- 小売業の時価総額上位25社の内、18社が今期最高益を更新予想
- 消費に停滞感が出ている。百貨店はインバウンド需要の減少と高額品の販売低下で業績が悪化
- アジアで販売を拡大する小売株やネット販売で成長する小売株の最高益更新続く
これら3点について、楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
小売大手には最高益更新中の銘柄が多い
少子化が進む日本では小売業は衰退産業というイメージがある。、だが意外にも、日本の小売業大手には安定的に最高益を更新している企業が多数ある。小売業の時価総額上位25社で見ると、実に18社が今期最高益を更新する予想だ。
小売業時価総額上位25社の連結経常利益:前期実績と今期予想、今期最高益更新の有無

(出所:今期経常利益は会社予想。今期とは、2月期決算企業では2017年2月期、3月期決算企業では2017年3月期、5月期決算企業では2017年5月期、6月期決算企業では2017年6月期、8月期決算企業では2016年8月期、12月期決算企業では2016年12月期を指す。楽天証券経済研究所が作成)
上の表は、経常利益で最高益更新を予想する企業を示している。セブン&アイ・ホールディングスは、国内外のコンビニエンスストアが好調で経常最高益を予想している。しかし、国内で百貨店とスーパーの閉店を増やすことに伴い特別損失が出るために、今期の連結純利益は前年比マイナス50%と大幅に減る予想となっている。
この表で注目していただきたいのは、最高益更新の有無と予想配当利回りだ。予想配当利回りは、会社が予想する今期の一株あたり配当金を10月4日の株価で割って計算している。
最高益更新企業には、安定的に株価が上昇している企業が多いため、配当利回りは相対的に低くなっている。一方、最高益を更新していない企業は、株価が低迷しているために配当利回りが高くなっている企業が多くなっている。
小売業:昔は景気敏感セクター、今はディフェンシブセクターに
窪田氏が日本株ファンドマネージャーになった1987年、小売業の時価総額上位には百貨店がずらりと並んでいたという。百貨店は高額品の販売比率が高く、景気変動の影響を受け易いため、当時小売業は「景気敏感セクター」というイメージを持たれていた。
ところが、今や百貨店は小売業の時価総額上位からほとんど消えた。時価総額上位25位以内に入っているのは、三越伊勢丹と丸井だけだ。代わって、日用品を販売するコンビニエンスストアやカジュアル衣料品店などが時価総額上位を占めるようになった。
景気変動の影響を受けにくい日用品や食品を売る小売業が上位を占めるようになったことから、現在、小売業は景気敏感セクターではなく、景気変動の影響を受けにくい「ディフェンシブセクター」と見なされるようになった。安定的に最高益を更新していく小売株は投資対象として魅力的だ。
2016年は消費が停滞、インバウンド需要の減少も逆風
2016年は消費の勢いが落ちてきていることに注意が必要だ。2015年まで好調だった高額品の販売は下火になり、代わって低価格品の売り上げが伸びている。不況時に好調な100円ショップや安売り店に勢いが出ている。外食業でも、客単価の低い業態に客が流れる傾向が出ている。
天候要因にも注意が必要だ。猛暑で夏物消費は比較的好調だったが、9月は大型台風が多かったために小売業全般に売り上げが大きく落ちている模様だ。
円高が日本企業の業績を圧迫する要因となっているが、大手小売業は海外で生産した製品を日本に輸入して販売するケースが多く、円高はメリットとなる。ただし、円高でインバウンド(来日外国人観光客の買い物)需要が減少しているので、インバウンド需要で大きな恩恵を受けてきた小売企業には注意を要する。
百貨店は、インバウンド需要減少と、高額品消費不振の2つの逆風を受けているので、当面、投資を避けた方がいいだろう。