CEATEC JAPAN 2016が、2016年10月4日~7日までの4日間、千葉県幕張の幕張メッセで開催されている。主催は、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)。
今年で17回目を迎えるCEATEC JAPAN 2016は、昨年までの「IT・エレクトロニクス総合展示会」から、「CPS/IoT Exhibition」へと展示内容を変更。「つながる社会、共創する未来」をテーマに、1710小間に648の企業および団体が出展した。
開催初日には、主催3団体の1つであるCIAJの会長を務める、富士通の山本正已代表取締役会長が、「IoTがもたらす豊かな未来に向けて」をテーマに基調講演を行った。
富士通 代表取締役会長の山本正已氏
冒頭、山本会長は、「ICT産業は、通信機器に加えて、ネットワーク、サービス、放送などを加えると売上高で90兆円を超える日本の基幹産業である」と述べる一方、「IoTはすでにさまざまな領域で利用されており、ビジネスや暮らしを変え始めている」とし、実際に活用されている例として、インドネシアにおいてスマホの位置情報などを活用した渋滞対策、国内では植物工場において、温度、湿度、CO2濃度を測定し、安定した栽培が可能にするとともに、カリウムを5分の1に下げることで入院患者に対応したレタスが作れること、製造現場の生産ラインの状況を把握し、経営判断に役立たせるといった活用を示したほか、アイルランドでは、医療分野において、スマホを活用したバイタルデータの測定を通じて、日常生活の注意点を指導するといった活用や、脳梗塞などのリハビリに用いられるといった例を示してみせた。
また、山本会長は、富士通が創立100周年を迎える2035年にどんなことが起こるのか、そこで富士通はテクノロジを通じてどんな貢献ができるのかといったことを、16万人の社員とともにジャムセッションを実施したことに触れながら、「2035年には、世界の人々が、バーチャル空間上で、対面に近い形で対話を行うことができ、自動翻訳機能も、それぞれの国の文化などを考慮した自然なやりとりができるようになる。これらの議論は、AIがファシリテータを務めて、専門家や関連データを駆使して、解決へと導くようになる。また、健康についても、体内のナノロボットとAIが連動して、個人の健康を管理し、アドバイスを行うようになる。健康寿命が伸び、AIやロボットの普及によって増えた余暇を有効に活用したり、退職後も社会参加したり、キャリア教育を受けられたりする社会が訪れ、これをテクノロジーがサポートすることになる。これらは、すべて、テクノロジーロードマップから見ても十分実現が可能である。IoTは豊かな社会をもたらす力がある」とした。
だが、その一方で、山本会長は、IoTが持つ課題についても言及した。それを「技術」、「社会」、「経済」の3つの観点から検証してみせた。
技術としては、センシングでは半径30cmの誤差にまで改善した高精度リアルタイム測位によって、店舗では、どの製品の棚の前にいるのかがわかるところまで精度が高まってきたが、まだセンシング技術の精度を高める必要があるとした。また、センサの活用範囲を広げる上では、電力がボトルネックになる可能性があると指摘。センサの省エネ化とともに、環境発電を利用すれば、昼夜の温度差を利用した発電が可能になり、これを活用するメリットを訴求した。
さらに、ネットワークに対する要求が高度化し、多様化するなかで、さらなる高スループット、大容量、高信頼性、低遅延、多種多様接続などが必要になるとした。「自動運転はリアルタイムでの処理が必須。遅延が発生すれば重大な事故につながる」と指摘。この解決のためには、低消費電力であり、低コストなネットワーク接続のほか、2020年に国際規格が決定する見込みである5Gの可能性についても言及。「4Gの1000倍の容量を持つ5Gを、東京オリンピックをにらんで、世界に先駆けて実用化するとともに、世界的な標準化をリードする必要がある」と述べた。
また、「フォグ」とも表現されるエッジコンピューティングについては、「トラフィックが増大し、処理が膨大になるに従い、すべてをクラウドに依存することには限界がある。ユーザーにより近いところで処理を行い、ネットワークとコンピューティングが融合したエッジコンピューティングが、これからの主流になるだろう。この実現には5Gが重要な役割を果たす」と述べた。