今日のポイント
- 日経平均は1万6000~1万7000円のレンジでやや膠着しつつある。投資環境が徐々に改善しつつあるが、上値を追うにはまだ力不足。材料待ちの膠着が今しばらく続きそうだ
- 日銀のETF買いで日本株の需給が改善している。日銀が日本株を買い支えている間、外国人が大量に日本株を売った。日銀のETF買いは外国人の日本株保有を大幅に減らす効果があった。また、日銀のETF買いの効果で裁定買い残高がリーマンショック時の水準まで低下していることも需給面のプラス材料
- 将来、日銀が日本株を売るときには需給面の大きな懸念材料となる。ただし、日銀が日本株を売るのは遠い将来のことだ。目先は日銀の買いが日本株上昇の大きな支援材料となる状況が続く
これら3点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。
日経平均に足元やや膠着感
10月12日の日経平均は184円安の1万6840円だった。11日に1カ月ぶりに1万7000円台を回復したが、いったん1万7000円の壁に打ち返された形となった。投資環境は徐々に改善しているが、まだ、上値をトライする条件は整っていないと考えられる。
日経平均週足:2015年1月5日~2016年10月12日

(注:楽天証券マーケットスピードより窪田氏作成)
今の日経平均は、二重の柵に囲われた状態だ。ここ3カ月は、1万6000~1万7000円の柵(2本の赤い線)に閉じ込められて外に出られなくなっている。その外側には、さらに1万5000~1万6600円の壁(2本の水色の線)がある。一時的に内側の柵を越えても、外側の壁まで越えられそうにない状況だ。
上値が重く、下値が堅い相場が続いている理由
今の相場材料はみな中途半端で、上値トライにも下値トライにも不十分だからだ。
(1)円高への恐怖がやや低下
1ドル100円を割れる円高が進む可能性は低下した。米景気は堅調で、年内に米利上げが見込める状況だからだ。ただし、米景気の回復力は鈍く、年内に利上げができなくなる不安もまだ残っている。
(2)11月8日にトランプ大統領が実現する恐怖は低下
反資本主義・反グローバル主義の過激発言を繰り返すドナルド・トランプ氏の支持率が低下してきたことを株式市場は好感している。ただ、対抗候補のヒラリー・クリントン氏も不人気で、米大統領選は「不人気決戦」の様相を呈している。
クリントン氏が消去法的に大統領に選ばれても強いリーダーシップを持つことはできないかもしれない。また、クリントン氏も最近、環太平洋経済連携協定(TPP)反対など反グローバル主義に寄った発言をするようになっており、クリントン大統領が実現しても株式市場が素直に好感できるかわからない。
(3)Brexitやドイツ銀不安によるショックは緩和
Brexit(英国のEU離脱)可決で世界恐慌になるといった極論は影をひそめた。ドイツ銀行への巨額課徴金は減額の方向で話が進みそうだ。ただし、EUへの求心力が低下している問題、欧州の銀行が不良債権を抱えて体力が低下している問題は解決していない。
(4)中国景気失速の不安は低下
足元の中国の景気指標は改善傾向にある。ただし、中国経済の構造問題は解決していない。
(5)資源バブル崩壊の痛手は和らいでいる
原油など資源価格が反発したので、資源国の景気や資源関連産業が一段と悪化するリスクは低下した。ただし、資源ビジネスが構造問題を抱えた状況は変わらない。