「日本企業はERPへの投資が大きい反面、デジタル化やデジタルマーケテイングへの投資でグローバル企業から大きく遅れをとっている。これは大きな問題だ。CIOが適切なリソース配分へと舵を切れるかが重要だ」――。
米Gartner リサーチ部門 バイスプレジデント Andy Rowsell-Jones氏
米Gartnerのリサーチ部門でバイスプレジデントを務めるAndy Rowsell-Jones氏は10月6日、ガートナー ジャパンが開催したイベント「Gartner Symposium/ITxpo 2016」で会見し、米Gartnerが毎年調査を実施している世界の最高情報責任者(CIO)を対象とした「CIO Survey」の最新の状況について報告した。
現在、デジタルテクノロジのビジネスへの活用が進んでいる。Andy氏によると、2015年の日本企業には、社内にデジタルビジネスの仕組みを作る傾向が見られた。2016年は状況が進み、社内だけでなく社外とつながってデジタルビジネスのエコシステムを形成するようになった。
デジタルビジネスへの取り組みは企業にとって重要だとAndy氏は指摘する。CIO調査とは別に実施したCEO調査によると、2019年までに商品サービスへの支払いの46%がデジタルで行われるようになるからだ。モバイル機器やパソコンの世界だけでなく、自動車や医療などの世界にもデジタルが浸透するという。
日本はデジタルエコシステムへの参加意識が乏しい
デジタルビジネスの原資となるIT予算についてCIOに調査したところ、ITに使える予算はグローバル全体で増えていることが分かった。グローバル平均では、2016年は2015年比で2.2%、2017年も2016年比で2.2%増えた。日本企業はグローバル平均と同じく2.2%で増えている。「微増だが、使えるお金はあることが分かる」(Andy氏)
CEO調査からも分かる通り、今後は価値の46%がデジタルから生まれる。このため、デジタルエコシステムへの参加が重要になる。実際に、デジタルエコシステムに参加している組織が増加している。「デジタルエコシステムに参加している」と表明している企業は、先進企業で80%、平均的企業で49%に達する。
ガートナー ジャパン エグゼクティブプログラムグループ バイスプレジデント兼エグゼクティブパートナー 長谷島眞時氏
一方で、日本企業で「デジタルエコシステムに参加している」と回答した企業は、わずか17%にとどまる。「非常に低くてビックリする」(Andy氏)。
日本企業がデジタルエコシステムに参加していない理由について、ガートナー ジャパンでエグゼクティブプログラムグループバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナーを務める長谷島眞時氏は、回答企業の65%が製造業だった点を指摘する。
「製造業は、系列や付き合いを重視する業界だ。ベンダーをオープンに選ぶことができない。一方で、デジタル化に取り組むためには、これまで付き合いのなかった新たなパートナを見つける必要がある」(長谷島氏)