展望2020年のIT企業

ブロックチェーン技術を勘定系に適用するITベンチャー

田中克己

2016-10-21 07:30

 ビットコインなど仮想通貨・資産を支えるブロックチェーン技術の利用範囲が広がり始めている。その1社、ビットコイン取引所を運営するテックビューロは非金融業に勘定系システムへの適用を働き掛けている。決済や電子マネーなど新しい金融サービスに必要なシステム構築費用を劇的に下げるブロックチェーンが。市場参入をスピーディにする。

発行・取引手数料を収益源にするテックビューロ

 テックビューロは、透明QRコードなど新規技術の管理とランセンス販売を目的に2014年6月に設立された。その中で、ブロックチェーン時代の到来を予想した朝山貴生社長は「条件がそろえば、事業化すること」を考えていた。2014年末にある投資家との出会いから、ブロックチェーン事業への集中を決断。世の中のトレンドが変わり始め、FinTechへの追い風も吹きはじめた。

 最初に手掛けたのは、ビットコイン取引所の買収だった。「為替エンジンが必要だった」(朝山社長)からで、買収した取引所を自社ブランドZaifに切り替えて、2015年3月に再スタートする。同時に、ブロックチェーン構築プラットフォームmijinの開発に着手。2015年9月に正式発表するとともに、IT企業など約10社と業務提携し、市場開拓に乗り出す。

 パートナーの1社であるインフォテリアらは、ミャンマーの金融機関で融資・貯金システムのデータ移行を成功させている。

 mijinはクラウド上でもオンプレミスでも構築できるプライベートなブロックチェーン構築プラットフォーム。仮想通貨のほか、電子マネーや電子カード、ポイントなどの発行から取引まで支援をする。テックビューロはそれらを取引所に上場させて売買する仕組みも用意する。こうした電子資産の発行や取引の手数料などを収益源にする。

非金融業への採用を働きかける

 朝山社長は1998年から2003年まで米シリコンバレーなどで、決済系サービスやソーシャル広告サービスなどの開発に携わった。開発したソフト技術を駆使して立ち上げた事業を売却したり、閉じたりもした。そうした中で設立したテックビューロについて、朝山社長は「勘定系には向かない、高速取引は無理などと言われたことを、我々は可能にした。ブロックチェーン市場は未熟だが、当社の技術は成熟している」と自信をみせる。

 それを裏付ける事例がある。スーパーや小売店向け電子マネーの発行を手掛けるアララが2016年10月、そのインフラにmijinを適用する実証実験に成功したこと。クラウド上に構築した社内通貨決済システムの可用性とデータの整合性を検証したもので、同社は1年以内の実用化を目指すという。

 金融機関における検証も行われた。SBI住信ネット銀行が勘定系システムにブロックチェーンへの代替を想定した実証実験を行った結果、トランザクション量増大による性能低下、データの改ざんなどは一切発生しなかったという。

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