ノークリサーチは10月3日、中堅・中小市場におけるIT商材の導入効果および費用に関する調査の結果を発表した。
調査結果の主な内容は以下の通り。
IT商材の導入効果において「売上改善」と「経費削減」を両立できているケースは25%程度
年商500億円未満の中堅・中小企業全体に対し、過去3年間の累計金額が最も高かった業務システムの委託先/購入先(プライムの販社/SIer)から最も直近で導入したIT商材(IT関連資産やサービス)の導入効果を尋ねた結果が以下のグラフ。なお、効果を判定する際に、「売上改善」と「経費削減」の2つの観点による「○」「×」「N/A」の評価を組み合わせているため、合計で9通りとなっている。
(ノークリサーチ提供)
こうしてみると、「売上改善」と「経費削減」の双方で期待通りの結果が得られたケースは25.6%にとどまっていることが分かる。同社では、IT活用における「導入効果」をさらに改善していくことの必要性を改めて確認できるとしている。
IT商材ごとに「導入効果」と「費用」の評価平均を把握し、自社の傾向と比較することが重要
調査では、導入効果に加え、IT商材の活用に要する「費用」についても同様に集計/分析を行っている。下のグラフは上記に記載されたIT関連詳細やサービスのうち、「情報系システム」「事務機器」「IT運用保守アウトソーシング」に要した「費用」に関するユーザ企業の評価を集計したもの。こちらも「導入費用」「運用費用」の2つの観点で、金額が予定内だったか否かの評価を組み合わせており、合計4通りの集計となっている。
(ノークリサーチ提供)
IT商材によって「導入費用は予定金額内だが、運用費用が超過している」、または逆に「運用費用は予定金額内だが導入費用が超過した」といったようにさまざまな状況になっていることが分かる。こうしたことから販社/SIerとしては、自社が主に取り扱うIT商材の導入効果や費用の傾向を把握し、市場全体の平均と比べて劣っている部分などはないか、確認/検証しておくことが重要と考えられる。
自社と類似した顧客社数シェア上位の販社/SIerにおける評価結果を参照することが有効
また、IT商材ごとの集計だけでなく、顧客社数シェア上位の販社/SIerごとの評価結果も集計されている。下のグラフは、年商500億円未満の中堅・中小企業全体におけるIT商材の「導入効果」と「費用」に関する評価結果に加えて、具体例の1つとして「富士ゼロックス」と「日本IBM」をプライムの販社/SIerとするユーザー企業における評価を集計した結果をプロットしたもの。
(ノークリサーチ提供)
日本IBMは中堅・中小企業全体と比べると「導入効果」において「売上改善:○、経費削減:○」の割合が高く、幅広い導入効果を実現できているユーザー企業が多いことが分かる。
一方、富士ゼロックスは「導入効果」において、「売上改善:N/A、経費削減:○」の割合が相対的に高い。「売上改善は求めていないが、経費削減をしっかりと行いたい」というユーザー企業に対し、その期待に応えられているケースが多いと考えられる。
当然ながら、こうした販社/SIerごとの評価結果の背景には、その販社/SIerが主な顧客層とする企業の年商や業種、また注力しているIT商材の種類やソリューション内容が深く関係する。販社/SIerとしては自社と近い顧客層やIT商材ポートフォリオを持った顧客社数シェア上位の販社/SIerにおける評価結果を参照し、自社として取り組むべき改善点などを確認/検証していくことが有効と考えられる。
調査は、同社が発行する「2016年版 中堅・中小企業の業務システム購入先のサービス/サポート評価レポート」に向けて行われたもので、日本全国/全業種の500億円未満の中堅・中小企業における「情報システムの導入や運用/管理の作業を担当している」または「情報システムに関する製品/サービスの選定または決裁の権限を有している」従業員を対象に、7月から8月にかけて実施された。有効回答件数は1300社。