Google Earthは、個人レベルで一昔前の軍事衛星レベルの空撮画像を閲覧できるシステムだが、『ドラえもん』にはその名の通り、「自家用衛星」という道具が登場する(*4)。
これは持ち運べるサイズのミニチュア衛星で、野比家の庭からロケットで打ち上げて衛星軌道に乗せ、のび太は部屋にいながらモニタで町内上空の空撮動画中継を眺められる。もしGoogle Earthがリアルタイム動画を中継できるようになれば、これはほぼ実現できるだろう。
Terra Bella
Googleは2014年、小型の画像用衛星を軌道に打ち上げるSkybox Imaging(現Terra Bella)を買収している。自前の衛星とGoogle Map/Google Earthが持つ地理情報との連動により、「自家用衛星」はかなり近づいた。
無論、世界中の任意地点の(静止画ではなく)動画中継となれば、技術的課題やプライバシー問題などが山積みだが、のび太が町内を監視する程度の範囲であれば、衛星でなく巡回ドローンのカメラで十分だろう。Googleほどの財力と企業規模があれば、特定市町村程度の範囲を複数台のドローンでカバーするなど、たやすそうだ。
実際、Google社は2017年にドローン宅配サービスをスタートする目標を掲げているし、既にAmazonはドローン配達便「Prime Air」を試験運用している。ドローンの電源は太陽光蓄電でなんとでもなりそうだ。
次回の後編では、Googleの企業理念をそのまま体現したかのようなひみつ道具「宇宙完全大百科」の話を中心に、ITの始祖にしてコンピュータの生みの親であるJohn von Neumann(ジョン・フォン・ノイマン)の言行について、考えてみたい。
- 脚注
【*1】てんとう虫コミックス 第9巻「トレーサーバッジ」(「小学六年生」75年9月号掲載)に登場
【*2】てんとう虫コミックス 第27巻「ポラマップスコープとポラマップ地図」(「小学四年生」81年7月号掲載)に登場
【*3】てんとう虫コミックス 第42巻「町内突破大作戦」(「小学五年生」「小学六年生」90年4月号掲載)に登場
【*4】てんとう虫コミックス 第17巻「自家用衛星」(「小学六年生」78年11月号掲載)ほかに登場
- 稲田豊史(いなだ・とよし)
- 編集者/ライター。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。 著書に『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)がある。 手がけた書籍は『ヤンキー経済消費の主役・新保守層の正体』(原田曜平・著/幻冬舎)構成、『パリピ経済パーティーピープルが市場を動かす』(原田曜平・著/新潮社)構成、評論誌『PLANETSVol.9』(第二次惑星開発委員会)共同編集、『あまちゃんメモリーズ』(文芸春秋)共同編集、『ヤンキーマンガガイドブック』(DUBOOKS)企画・編集、『押井言論 2012-2015』(押井守・著/サイゾー)編集など。 「サイゾー」「SPA!」ほかで執筆中。(詳細)