前編に続き、Googleがいかに『ドラえもん』に登場する22世紀の「未来デパート」化しているかという話を続けよう。
ひみつ道具の中でも比較的知名度の高い「ほんやくこんにゃく」(*1)は、食べると異国言語との会話が可能になる、いわば「リアルタイム翻訳ツール」。これはGoogleの音声認識技術と「Google翻訳」が実現に近づけている。
Google はこの9月、ディープラーニング技術を駆使した新しい翻訳システム「Google Neural Machine Translation(GNMT)」の開発を公表。従来の翻訳システムに比べて翻訳エラーが55~85%も減少したという。音声認識や翻訳は、サンプル数・文例数が多ければ多いほど精度が上がるため、今後も品質向上スピードが衰えるとは考えにくい。食用のガジェットとするかはともかくとして、機能的にほんやくこんにゃくと遜色ないツールに仕上がるのは時間の問題だ。
中国語から英語へのPBMT、GNMT、人間による翻訳の例
提供:Google
「音声認識+テキスト出力機能」だけに特化した「ききがきタイプライター」(*2)というひみつ道具もある。これは音声入力用のマイクとポータブルプリンタが一体化したもの。「プリンタによる紙出力」が味わい深いアナログ機構ではあるが、むしろ再現は容易なガジェットだ。作中では入力音声の音量の大小によって打ち出される文字の大きさ(級数)が変化するが、それも技術的にはたいして難しくない。
ドラえもん ©藤子プロ・小学館イーブックイニシアティブジャパン ウェブサイトから引用
各所で語られているように、Googleの使命は「世界中の情報を整理し、世界中の人々がそれにアクセスできて、使えるようにすること」。そんなGoogleの会社理念は、実はここから発想されたのではないか?と錯覚してしまうようなひみつ道具もある。「宇宙完全大百科」(*3)だ。
「宇宙完全大百科」は、人類のあらゆる記録・知識を、ノートPCサイズの端末器でいつでも参照できるというもの。言葉の意味の百科事典的な解説はもちろん、のび太の小学校で出された宿題の解答から、子供たちの草野球試合の結果まで、その網羅範囲はまさに「完全」。画像データも完備している。SF世界で言うところの世界記憶、いわゆる「アカシックレコード」へのアクセス端末だ。
「宇宙完全大百科」は22世紀のプロダクトゆえ、20世紀を生きるのび太のパーソナルデータ、学歴や未来の配偶者といった個人情報までが詳細に記されている。さながらデジタル版「アガスティアの葉(インドの聖者であるアガスティアが太古に残した個人の運命への予言が記述された葉)」というわけだ(20年以上前のサイババブームが、実に懐かしい)。