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ITは「ひみつ道具」の夢を見る

ドラえもんが誕生する世界のために(後編)--技術革新の行くすえ - (page 2)

稲田豊史

2016-10-23 07:00

 特筆すべきは、「宇宙完全大百科」の情報の物理的な置き場所である。作中のドラえもんの説明をそのまま引用すると、「ディスクにきっちりつめこんでも星一こほどの大きさになって宇宙空間に浮かべてある」。22世紀の情報圧縮技術を駆使しても、物理ストレージのサイズが星一個ぶん! 非常に萌える説明だ。

 地球上に存在するあらゆる情報をストレージ化できたら……というのは、SFギーク的な妄想としては定番のものだが、そのダウンサイズ版は言うまでもなく現在のインターネット。その意味で、現在流通しているネット常時接続のPCやタブレット端末は、すべて「宇宙完全大百科」のベータ版といえるだろう。なお、「宇宙完全大百科」の検索時入力デバイスはキーボードではなく、マイクによる音声入力。Google的にはお手の物である。


 ちなみに本作が描かれたのは1990年。一般的に「クラウド」や「オンラインストレージ」の概念が浸透していないばかりか、日本では民生用インターネットすら登場していない。ここは素直に、藤子・F・不二雄の先見性を賞賛すべきである。

 なお、ITガジェットの権化といえばパーソナルコンピュータだが、コンピュータの歴史を追った大著『チューリングの大聖堂:コンピュータの創造とデジタル世界の到来』(早川書房、2013年刊)の著者であるGeorge Dyson(ジョージ・ダイソン)は、Googleを同書内で以下のように形容した。

「チューリングの頭の中にあった戦略『入手可能なすべての答えを集め、問われるすべての問いを募り、そしてその結果をマップする』をそのまま忠実に実行している組織」

 まるで「宇宙完全大百科」の設計思想のようではないか。説明するまでもないが、同書で詳伝が記述されているAlan Mathison Turing(アラン・マシスン・チューリング)(1912-54)は、コンピュータによる計算の基本概念である「チューリングマシン」という仮想機械を考案した数学者・暗号解読者である。

 こうして、ITガジェットというキーワードで、「ドラえもん」「Google」「コンピュータ」がつながったわけだが、本稿を「Googleはドラえもんの道具のいくつかを実際に作り上げた」で終わらせるつもりはない。

 チューリングとともに、コンピュータの基礎を築いた20世紀最高の頭脳をご存知だろうか。John von Neumann(ジョン・フォン・ノイマン)(1903-57)、現在のコンピュータの動作原理である「ノイマン型コンピュータ」の考案者だ。

 Neumannは紛れもない天才、「コンピュータの父」とも呼ばれる偉人だが、よく知られた“暗黒面”も持ち合わせている。彼は第二次世界大戦中、米国における原子爆弾開発の立役者だった。Neumannは天から授かった類まれなる頭脳を、人類史上最凶最悪の兵器を現実化することに使った。しかも、戦争が終わってもなお米国の核兵器開発に加担し続けた、というおまけ付きだ。

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