サービタイゼーション

事例から学ぶサービス事業の収益化と競争優位の確立--ものづくりの行き先(3)

垣貫 己代治(サービスマックス)

2016-10-31 19:21

 製造業は、これまでのように生産した製品を販売することで稼ぐのではなく、製品をサービスとして提供することによって稼ぐ時代に変わってきている。この新たなビジネスモデルは「サービタイゼーション」と呼ばれている。本連載では、製造業がサービタイゼーションを推し進めるためのポイントを紹介していく。

 サービス事業に対する新しい考え方「サービタイゼーション」は、米国や欧州を中心に急速に広まりつつあります。これまで本連載では、サービタイゼーションとは何なのか、実現に向けて何から着手すべきかについて説明してきました。今回は実際の事例を取り上げて、サービタイゼーションに向けたステップアップの方法について考えてみたいと思います。

 今回紹介する事例は、皆様にもなじみ深いコカ・コーラのグループ企業、コカ・コーラ・エンタープライズ(以降CCE)という系列ボトラーの1社で、欧州を中心に活動しています。欧州内に17の工場、1万人を超える従業員を抱え、40以上のブランドの飲料品を販売しています。

 飲料メーカーによる保守対象の設備というと自動販売機を思い浮かべるかもしれませんが、欧米は日本とは事情が異なり、マクドナルドをはじめとしたファストフード店などに設置されているベンディングマシンが保守サービスの主な対象となります。CCEが欧州に展開するベンディングマシンは60万台を超え、630人に及ぶフィールドサービスエンジニアが日々その保守点検を行っています。

 CCEが頭を抱えていた課題は、フィールドサービスエンジニアの稼働率の低さでした。そこで、実際に稼働するフィールドサービスエンジニアの業務にかかる時間を測定しました。同社の管理部門は、調査を実施する前の段階では、フィールドサービスエンジニアの移動時間が最も工数が大きいだろうと推測していました。

 しかし、調査の結果、全体の2割近くを作業指示内容の確認や報告書の作成・送付、部品の手配といったいわゆる管理業務が占めていることが判明しました。

 これらの作業を行うために、フィールドサービスの現場では、持参したPCからセンター側のシステムへリモートアクセスしなければなりません。接続には相応の時間を要し、かつシステム側への参照・入力作業も煩雑であったため、エンジニアからは敬遠され、旧来の紙による作業が多く残っているのが実情でした。

 CCEは対策に着手しました。モバイル端末を導入し、保守・点検業務に必要となる情報に即座にアクセスでき、また報告書の作成・送付、交換部品の手配などもモバイル端末上から行うことができるクラウドベースのフィールドサービス管理ソフトウェアの導入を決定しました。

 導入から3カ月後、CCEは再度、エンジニアの工数調査を行いました。その結果、クラウドベースのフィールドサービス管理ソフトウェアの導入から間もないにもかかわらず、管理業務にかかる工数は従来の約半分となり、全体の10%近くまで減少させることができました。

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