富士通研究所とFujitsu Laboratories of America(FLA)は10月19日、ブロックチェーンのセキュリティ強化技術として「トランザクション機能限定技術」と「秘密分散鍵管理によるブロックチェーン上の文書秘匿化技術」の2種類を開発したと発表した。
ブロックチェーンでの取引の実行には利用者ごとにデジタル鍵が必要となるが、鍵の紛失で送金ができなくなったり、鍵の盗難で口座のお金を全て使われたりといった懸念が指摘されていた。
トランザクション機能限定技術は、送金などのトランザクションを実行する際に、利用先を特定の店に限定するなど事前に設定したポリシーに基づいて取引を制限できる。ポリシーを満たさない取引はブロックチェーンに記録されないため、万が一、鍵を盗まれた場合でも被害を限定的にすることが可能になる。
特定の店だけで利用可能な電子通貨(富士通提供)
また、ブロックチェーンでは、文書を格納することで原本性の保証を確実にするが、秘密情報が含まれる文書も全ての利用者に内容が公開されるという問題があった。
秘密分散鍵管理によるブロックチェーン上の文書秘匿化技術は、複数の利用者で異なる鍵の断片を持ち、一定数の断片がそろうと鍵が生成される秘密分散鍵管理の秘匿制御システムである。
これにより、契約書の機密部分は鍵の断片を持つ当事者が協力するときにのみ情報を登録、閲覧でき、一般利用者には見せないようにする秘匿制御が可能になった。鍵を紛失した際に協力者による救済を実現したり、高額な取引などの稟議で複数管理者の承認を必須にしたりといったワークフローを実現できる。
ブロックチェーン上の文書秘匿化(富士通提供)
今後、富士通研究所とFLAは、今回開発した技術を機密情報や個人情報を組織間で安全に取り扱えるクラウド基盤に実装していく。さらに金融分野などでブロックチェーンの業務適用を想定した検証を進め、2017年度以降の実用化を目指す。