日本株展望

JR九州が東証に上場--隠れた投資魅力とリスク

ZDNet Japan Staff 2016年10月25日 14時03分

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楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する

今日のポイント

  1. JR九州は2017年3月期に創立来初めて、鉄道事業が黒字化する見込み。2016年3月期に行った鉄道固定資産の減損と新幹線利用料の前払いによって、2017年3月期から鉄道事業の費用が約320億円減少することが、黒字化の主な要因
  2. JR九州のリスクは人口が減少する地域で赤字ローカル線を抱えていること。一方、鉄道以外の事業で高い収益を上げていることが魅力。高収益の駅ビル不動産事業は、これからさらに利益を拡大する余地があると考えている

JR九州(9142)が東証一部に上場

 JR九州の公募価格は2600円だが、初値は公募価格を上回ると予想されている。公募価格2600円で評価すると、JR九州の株価は割安と考えられるからだ。楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

 公募価格で計算すると、年率換算した“予想配当利回り”は2.88%と魅力的な水準となる。先に上場したJR3社、同じ九州を地盤とする西日本鉄道よりも高い配当利回りとなる。

JR九州の年率の予想配当利回り

 JR九州は当面、連結配当性向を30%とする方針を表明している。言い換えると、毎年の連結純利益の30%を配当金として株主に支払う方針だ。ただし、2017年3月期だけは連結配当性向を15%とする予定である。上場日の10月25日から決算期末(3月末)まで5カ月強しかないからだ。

 JR九州が2017年3月期末に予定する1株あたり配当金は37.5円だ。JR九州の想定価格2600円に対し、1.44%となる。下半期だけの株主に対して1.44%の配当を出すわけであり、年率換算すると2.88%の配当を出すことになる。

 JR九州は、配当金に加え、株主優待も実施すると表明している。3月末の株主に対し、鉄道運賃やホテル宿泊料金の割引券を出すと発表している。

JR4社と西鉄の株価バリュエーション比較
JR4社と西鉄の株価バリュエーション比較(注:楽天証券経済研究所が作成)

先に上場したJR3社は成長株だった

 先に上場した東日本、東海、西日本のJR3社は、新幹線が成長事業となり、最高益を更新し株価も長期的に上昇している。

JR3社の公募価格と比較した上場初値と10月24日株価の騰落率
JR3社の公募価格と比較した上場初値と10月24日株価の騰落率
(注:10月24日までの株価騰落率は株式分割を考慮して計算、楽天証券経済研究所作成)

 新幹線はかつてビジネス客中心の利用だったが、今は国民の足として、旅行客に幅広く使われている。訪日外国人の増加に伴って外国人観光客の利用も増えている。

これまで赤字だったJR九州の鉄道事業が初めて黒字へ

 JR九州は当初、新幹線を保有していなかったため、成長のもとがなかった。2011年に九州新幹線が全線開通してからは、新幹線に新たな業績拡大の期待がかかっている。加えて、2013年に運行開始したクルーズトレイン「ななつ星」、さまざまな趣向を凝らしたデザイン&ストーリー(D&S)列車が国内外の観光客に人気を博している。

 ところが、JR九州は分割民営化によって発足した1987年以来、鉄道事業が黒字になったことが一度もない。東京、大阪、名古屋の3大都市を地盤に持つJR3社とは収益地盤がまったく異なる。

 “3島会社”と言われるJRの九州、四国、北海道には、人口減少地域で赤字ローカル線を抱える不安がつきまとう。沿線人口の減少で、経営はこれからますます厳しくなる可能性もある。

 それでもJR九州は、公的資金の支援によって鉄道事業を2017年3月期に初めて黒字化させ、なんとか上場を実現した。2016年3月期は鉄道事業を含む運輸サービスが105億円の営業赤字だったが、2017年3月期は230億円の営業黒字への転換を見込んでいる。

 過去29年赤字だった鉄道事業がいきなり黒転するのは、2016年3月期に行った2つの会計処理の結果だ。

  1. 2016年3月期に鉄道事業の固定資産で5256億円の減損損失を認識している。その効果で2017年3月期から鉄道事業の減価償却費が約220億円減少
  2. 2016年3月期に九州新幹線の鉄道施設使用料2205億円(約20年分)を全額一括前払いしている。その効果で2017年3月期から新幹線貸付料が約100億円減少

 この2つの会計処理で2017年3月期に鉄道事業の費用は約320億円減少し、鉄道事業は黒字化する。

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