IBMの最高経営責任者(CEO)Ginni Rometty氏は、米ラスベガスで開催されている「Watson」のカンファレンスの基調講演で、Watsonの製品ポートフォリオ、エコシステム、顧客ベースなどについて説明し、多数の発表を行った。その概要は次のようなものだ。
「Watson Data Platform」:同社はWatsonのデータ取り込みエンジンを、同社のクラウドサービスおよび機械学習技術と組み合わせようとしている。基本的な考え方は、1つのプラットフォームにツールを取りそろえることで、ビジネスの意思決定を行う人が機械学習を利用しやすくするというものだ。
Watson Data Platformを利用することで、データサイエンティスト、エンジニア、アナリスト、開発者などのデータのプロフェッショナル間の協力も容易になるという。このプラットフォームでは、毎秒100Gバイトの速度で大規模なデータをクラウドに取り込むことが可能だ。データを洗浄、編集できるほか、ユーザー間のコラボレーションや、アナリティクス向けのドラッグアンドドロップサービスといった機能も提供される。
「Watson Virtual Agent」:IBMはコグニティブな会話テクノロジ「Virtual Agent」をリリースした。この技術は顧客エンゲージメントの向上を目指すものだ。これよって、チャットボットでWatsonを利用しやすくなる。Watson Virtual Agentを利用することで、業界横断的なコンテンツによるチャットボットの事前トレーニングが可能になり、適応のスピードも向上する。
Virtual Agentはソーシャルメディア、SMS、モバイル、組み込み技術などで利用できる。Virtual Agent、そして「Watson Conversation」はともにクラウドベースのサービスとして提供される。
「MobileFirst for iOS」でのWatson利用:IBMは、Watsonを一連のMobileFirst for iOSアプリに統合する。カスタムアプリは、同社がAppleと結んでいるパートナーシップを通じて提供されている。これは、IBMの自然言語処理サービスであるWatson ConversationとWatson APIが、iOSの音声認識フレームワーク向けに最適化されることを意味している。
IBMはWatsonとiOSの組み合わせを活用できる業界の例として、旅行業界、小売業界、金融サービス業界などを挙げている。
「Cloud Video」でのWatson利用:この取り組みは、Watsonをデジタル動画に適用し、非構造化データの追跡、情報の分析、コンテンツの活用などに利用するというものだ。オーディエンスに関するインサイトの獲得、シーン検出、ライブイベント分析などの機能が「IBM Cloud」経由で提供される。
またIBMは、コグニティブコンピューティングに関する資格制度や教育への取り組みを正式なものにしようと取り組んでいる。新しく発表された認定プログラムを補完するものとして、次のような取り組みがある。
- UdacityのAIに関するナノ学位。Udacityは、Watsonの基本をAI教育に取り込んだプログラムを提供する。
- IBMは、教育機関向けソフトウェア企業Kivuto Solutionsを通じて、同社のPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)である「Bluemix」やWatsonサービスへの無料アクセスを提供する。このプログラムで認められた、科学技術などの教育プログラムを持つ大学、コミュニティカレッジ、高校は、Watsonを利用できる。
- 大手教育サービス企業のPearsonは、Watsonをデジタル学習プログラムの一環として統合し、コグニティブコンピューティングとコースウェアを組み合わせる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。