NICT、災害状況要約システム「D-SUMM」を公開--被災報告をAIで整理・要約

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2016-10-30 07:00

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は10月18日、耐災害ICT研究センター及びユニバーサルコミュニケーション研究所において開発している災害状況要約システム「D-SUMM(ディーサム)」(Disaster-information SUMMarizer)のウェブ上での試験公開を同日より開始した。PCのウェブブラウザ又はタブレット端末から利用できる。


D-SUMMの地図表示動作例

 NICTでは2015年4月8日より、対災害SNS情報分析システムDISAANA(ディサーナ)のリアルタイム版を試験公開しており、2016年の熊本地震をはじめとする災害において、Twitter上の災害関連情報へ素早くアクセスできる手段として活用されているという。しかしDISAANAでは、「火災が発生している」「火事が起きている」など、意味的に類似する被災報告が別々に出力されていたほか、大規模災害の発生時に膨大な被災報告が出力されるため、被災状況の概要を一目で把握することは困難だった。そこで、この課題を解決すべく、災害状況要約システムの研究開発を進めてきたという。

 D-SUMMはこうした経緯で開発された、Twitter上の災害関連の投稿をリアルタイムに自動分析し、要約する機能を備えたシステム。人工知能を用いてTwitterに投稿された災害関連情報をリアルタイムに分析している。ユーザーが都道府県単位又は市区町村単位でエリアを指定すると、指定エリア内の被災報告を瞬時に要約し、そのエリアの被災状況の概要が一目で分かるようにコンパクトな形で提示する。

 具体的には、DISAANAで実現していた、「火災が発生している」「火事が起きている」などといった意味的に類似する情報をさらにまとめることで、よりコンパクトに被災報告を要約して提示できるようにした。また、被災報告をそのタイプ(地震、道路やインフラの被害、物資の不足等)ごとに分類して、必要とする情報へのアクセスを容易にしている。さらに、指定エリアの下位のエリア(指定エリアが県の場合は、県下の市町村)単位ごとに被災報告を整理し、重大な被災報告が多く挙がっているエリアから順に表示することで、どのエリアの被害が大きいかをわかりやすく提示する。

 今回公開されたのは、熊本地震の際のツイートを対象とした「熊本地震試用版」のD-SUMM及びDISAANA。熊本地震時(2016年4月14日から4月21日までの8日間)のツイート(日本語ツイートの10%ランダムサンプルを対象とする)を用いているという。なお、元の投稿が削除されている場合には、その投稿から抽出された回答の候補は出力されるが、元の投稿を確認することができなくなるとのこと。


D-SUMMによる熊本地震の被災報告の要約

D-SUMMによる熊本地震の被災報告の要約の地図表示

 NICTでは今後、DISAANAと同じくD-SUMMについても、実際に救援活動等を行う組織と協力して実証実験等を行い、さらなる機能追加や使い勝手の向上を図っていくとしている。

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