特急列車を利用する場合には「特急券」が必要であり、また自由席がなければ「指定席券」も必須である。それらと「乗車券」が1枚にまとまっているか否かなどのバリエーションもあり、ややこしい。そして、それらを入手できるのはどこか、列車に乗ってから入手するのもありなのか、ウェブなどで遠隔地から入手することは可能なのか、などもさまざまである。
たとえば先日、旅行に行った際に行く際の私鉄の特急の指定席券が事前に予約・購入できるかどうかを調べたのだが、「会員登録が必要」となっていた。1回しか利用しない、あるいは次に利用するのはいつになるかわからないものに対して会員登録を求められるのは、たとえ住所などの入力項目が一緒であったとしても、ややちゅうちょしてしまう。外国から来た場合であれば、余計に敷居を高く感じるであろう。
こうしたシステムを構築する際には、そうした利用パターンにおけるUXも考慮すべきである。
最後に
公共交通機関を例にとって考察してきたが、他の料金を払ってある程度の時間滞在する施設(美術館や博物館、テーマパーク)などにも話は通じる。企画展の入場チケットで通常展示は見られるか否かとか、入場料と個々のアトラクションの料金が別だったりしないかといったことや、再入場は可能か、それがどう管理されるか、などのパターンを考えてみていただきたい。
さらに拡張して考えることで、より一般的なサービスを提供する場合にもつながるし、オフィス内の共有資産の管理などにも示唆をもたらすことができるであろう。そうした違う視点からの考察もUXをより深く考えるために役立つ方法である。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。HCI が専門で、GUI、実世界指向インターフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。