IBMは9月に三菱東京UFJ銀行とのブロックチェーンを活用した電子契約書の実用化に向けた検討への合意を発表した。Linux Foundationのオープンソースのブロックチェーン開発プロジェクト「Hyperledger Project」にも参加している同社は、ブロックチェーンをどのように定義し、展望を描いているのか。同社のGlobal Blockchain Labs Engagementバイス・プレジデントでEurope CTO(最高技術責任者)のJohn McLean氏とGlobal Blockchain Labs Engagementの技術責任者であるAnthony O’Dowd氏に話を聞いた。
IBM Global Blockchain Labs Engagementバイス・プレジデント 兼 最高技術責任者(CTO)のJohn McLean氏
--まずはIBMが考えるブロックチェーンの定義について、お聞かせください。
McLean氏:ブロックチェーンとはブロックチェーンの参加者が、同じ記録のシステムを使えるようにする「共有台帳技術」を意味します。
私達の生きている世界には、「ビジネスネットワーク」「資産」「市場」があります。「ビジネスネットワーク」の中には、顧客や銀行、パートナーなどさまざまな参加者がおり、そこでの取引や契約というモノとサービスの流れによって、「資産」が作られていきます。その中核にあるのが「市場」です。市場で取引をするために必要なのが「台帳(Ledger)」という記録のシステムです。
ブロックチェーンを使うと、ビジネスネットワーク上のすべての参加者が同じ共有台帳を使えるようになります。共有された台帳がない場合、各参加者が個別の記録を持つことになります。しかし、管理にはお金がかかり、エラーも起こりやすい。内容についても別々の視点が入るので、正確性に欠けてしまいます。それがブロックチェーンを使うことで、ビジネスネットワークの参加者がリアルタイムで最新の台帳を確認できるようになるのです。また、共有台帳はパーミッション型なので、参加者は自分と関係のあるトランザクションのみを扱うことができるようになっています。もちろん、監査人や統制当局には、全体の取り引きを見ることが可能です。
--ブロックチェーンを導入すると、システムはどう変わるでしょうか。
McLean氏:既存のシステムの多くが入れ変わるというより、顧客は現在のシステムをそのまま使いながら、参加者が増えても透明性や強固なガバナンスが保てるようにしたいと考えています。導入により合意形成がネットワーク上ででき、ビジネスネットワークでの取り引きの歴史も見られる。そして、その場で決済を完了できるのが、追加の利点になるでしょう。
--ビットコインとブロックチェーンの関係について考えを教えてください。
McLean氏:ビットコインはブロックチェーンの技術を適用したものであると考えています。もともとブロックチェーンの技術があり、そこから派生して生まれてきたのがビットコインであるということです。ビットコインには、統制が正しく取れていない、匿名性があるためマネーロンダリング対策(anti-money laundering:AML)や顧客管理措置(Know Your Customer:KYC)が適用できないといった課題があります。しかし、私達の考えるブロックチェーンでのデジタル通貨はビットコインのような暗号通貨とは逆で、(ビットコインアドレスを持っているのは誰かという情報について全く公開されないのとは違い)誰が所有しているかを認識できるものです。