デジタル顧客体験を生み出す取り組みは、何年も前から進められている。多くの企業はすでにアプリを作り、MartechやAdtechのスタックを組み上げている。オムニチャネルの提供や、AIの利用、IoTで接続された製品などへの取り組みも始めているかも知れない。そろそろ、デジタル変革はゴールに近づいたと言っていいのだろうか?
残念ながら、まだ時期尚早だ。
デジタル顧客体験は、デジタルビジネスの上っ面に過ぎない。こういった表面的な目新しさは、事業運営そのものを変革し、常に新たな要素を導入していかなくては、輝きを失ってしまう。Forrester Researchはこれを「デジタルオペレーショナルエクセレンス」(デジタル時代の業務改善)と呼んでいる。これこそが、デジタル変革の本丸だ。
Forresterは最近、2017年のデジタルビジネスに関する予想を発表した。この予想では、デジタル変革における業務改善の重要性に焦点を当てている。ここでは、2017年のデジタルビジネスに関する同社の予想を3つ紹介しよう。
- デジタル変革の中心は体験から業務改善に移る。既存の製品やサービスにデジタルのフロントエンドを付加することは、デジタル変革に向けてのスタート地点としてはいい。しかし、それだけでは十分ではない。Home Depotの最高経営責任者(CEO)Frank Blake氏は、デジタル技術に3億ドルを投じて、顧客がスマートフォンで商品を注文し、店舗で受け取れるようにするという計画を発表した。同氏はそのわずか6カ月後に、顧客が店舗にある在庫だけでなく、カタログから自由に注文できるようにするため、新しい配送センターの設置と配送プロセスの刷新を行うとして、予算規模を15億ドルに拡大した。2017年には、企業は業務改善に対する投資を大幅に増やす(あるいは投資を始める)必要がある。
- デジタル変革関連予算が10億ドル規模になる。業務変革に10億ドルを超える予算を投じようとしている企業は、Home Depotだけではない。Wal-Martは、デジタルエンゲージメントのための中核的な機能を刷新するために、20億ドルを投じる予定だ。また、General Electricは、デジタル企業に変わるために10億ドルの予算を用意している。家庭用品メーカーのUnileverは、直販製品ラインを確立するために、Dollar Shave Clubを10億ドルで買収した。もちろんこれらは技術に対する投資だが、製品やプロセス、人材に対する投資でもある。2017年には、多くの企業で予算の見直しが必要になるだろう。現在の予算規模は小さすぎる可能性が高い。Home Depotが学んだように、今後はこれまでデジタル顧客体験に投じてきた金額の4倍の予算を、デジタル業務改善に投じる必要が出てくる可能性がある。
- 企業は従来のタッチポイントの考え方とは異なる、総体的な顧客体験を構築する。タッチポイントの間の隙間で顧客を失ってしまうことはできない。デジタルビジネスの専門家は2017年に、ウェブ、モバイルアプリ、オフラインでの顧客との関わりの間にある壁を壊すための作業を加速する。「App+戦略」がスマートフォンを自動車や家の制御パネルに変え、ウェアラブルデバイスを保険会社に健康データを送信する道具に変えつつあるように、今後はデジタルストアや、ネットで注文して店舗で受け取るなどのオムニチャネル小売体験が主流になっていく。企業がまだカスタマージャーニーマッピングに取り組んでいないのであれば、今をおいてそのタイミングはない。
Forrester Researchの予想について詳しく知りたければ、http://forr.com/predictions2017から2017年の予想集をダウンロードして欲しい。この資料は無料で、「顧客の時代」を展望する15のトレンドについて説明している。
Ted Schadler氏は、Forresterでアプリケーション開発・提供プロフェッショナルへのサービス提供を担当するバイスプレジデント兼主任アナリストを務めている。Schadler氏のTwitteアカウントは、@TedSchadlerだ。またNigel Fenwick氏は、最高情報責任者(CIO)へのサービス提供を行うバイスプレジデント兼主任アナリストを務めており、同氏のTwitteアカウントは、@NigelFenwickだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。